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▼ MARRY, BAD END

結構自分が分かりやすいってこと、わかってるのかな。

重い空気の中、私たちは対面して座る私たち。久しぶりに呼び出された。正直言って、嬉しかった。けどまあ、期待はしていなかった。あからさまなその態度で、確信した。言うまでもなかったけれど、これがいい話で呼び出されたわけではないこと、私はちゃんとわかってる。バカじゃないから。


「綾華」
「何?」


コーヒーを飲みながら、私は彼の次の言葉を待つ。私から言ってなんてやらない。………そう覚悟してきたのに。言いにくそうな彼を見ると、やはり情と言うものが私の中にあるからなのか、…私は、苦笑いして、『早くいいなよ』と言ってしまった。

…これじゃあ、何の話を彼が今からするのか、私が悟っているかのようじゃないか。…彼も、尚のこと言いにくそうにする。ならば、仕方ないじゃないか。


「私たち、もう遊んでる時期は終わったじゃない?」
「…そう、だな」


私が突如、そんなことを言ったからか、彼は動揺していた。


「私ね、結婚を前提に考えたいのよね。そろそろ」
「…綾華」
「考えたんだけど、私の結婚相手は一也じゃないと思うの」


だって私にプロ野球選手の奥さんは荷が重すぎるし、支えることなんてできないと思うから。と、私は今できる精一杯の言い訳をした。苦しいかもしれない。だって、私は彼を支えるために、管理栄養士の資格まで取って、ともに歩くために努力してきたんだ。大学まで行かせてもらって。それを彼は知っているから、余計に言いにくかったんだろう。…そんな気遣い、無用なのに。


「だから、別れて欲しいの」


まさか彼に、私からこの言葉を言うことになろうとは思いもしなかった。絶対に私からは言ってやらないって。そう思っていたのに。結局私は、最後まで彼のために、善人面した私を破れなかった。自分のために、動けばよかったのかもしれない。けれど、出来やしなかった。


「本当に、…それでいいのか?綾華」
「それでいいのかって、何、その質問。まるで私が一也と別れたがってないかのように決めつけた言葉」


『自意識過剰もいい加減にしてよ』と、私は自分の気持ちを隠して。それが君のため、と。私ができる、最後の嘘。

今までたくさん嘘を吐いてきた。どんな嘘も、『一也のため』って。一也が気持ちよく、私との約束を破れるように。気持ちよく、他の女の子のところに行けるように。ああ、もう。どこから私は間違えたんだろう。


「…そうだよな。綾華こそ、俺に愛想つかしてたよな」
「当たり前でしょ。私だってバカじゃないんだからね」


バカなんだよ、私は。こんなに傷ついてまで。どうして一緒にいたんだろう。


「…綾華の隣には俺じゃない方がいい」
「でしょ?私も思うもの。私も一也も気付くのが遅かったんだよね」


さあ、今まで通り。笑って送り出そう。そう思っていたのに。



「最後まで俺に嘘吐くんだな」


「…え?」



何のことだか、私にはわからなかった。
最後まで嘘を吐く?一体それは、何の話?ああ、もう。最後の最後になって、ほころびが出始めてしまった。


「……そうさせたのは、俺だよな」
「さっきから一体、何を言ってるの?」


早く、終われ。これ以上、もう。



「……好きだったよ、綾華」



そう言い残して彼は私の前から立ち去った。



後から聞いた話、彼はその女の子と結婚したが、芸能界を騒めかせるほどの速さでスピード離婚をしたそうだ。




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