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▼ 美しい熱帯魚

ちがうなんていわないよ。
だってわたしは、かくしんはん。



「おい、桐沢」
「なに?」


校内でも話題の私たち。イケメンというカテゴリーに入る東条と、美女というカテゴリーに入る私。どこからどう見ても、釣り合いの取れている私たちは、一時は付き合っているんじゃないかと噂にもなったほどだ。しかも彼は、野球部のレギュラー。私は某ファッション雑誌の読者モデル。お互いにハイスペックだと思う。


「いい加減、ちゃんと否定しなよ」
「どうして?否定する理由がどこにあるの?」


少なくとも、私には利益しかない。今まで自意識過剰な輩たちが私に告白してきて、本当に面倒くさかったのだ。それが、彼が相手では敵わないと、一気になくなった。私には被害は被ってないし、きっと彼だって。


「お互いに利害一致してると思わない?東条だって迷惑してたんじゃないの?」


私は知っていた。『今は野球に集中したいから』と言って告白を断っていることを。だからこそ、私は否定しなかったのだ。まあ、私だって肯定はしていない。勝手に彼らがそう早とちりして理解してくれただけ。


「それとこれとは話が別だよ」
「私にとっては一緒なの。別に、東条は否定してくれればいいよ。私はYesもNoも言ってないから」
「…っ桐沢!」


東条が起こっているのは目に見えて分かった。けどいいんだ。怒ってくれて、全然かまわない。どういう解釈をされても、全然。女子たちからは、読者モデルをしているということだけでも批判されてるし、もう、何とも思わない。

それに付け加えてこうして登場に付きまとうから、性格が悪いだのなんだの、ありもしない噂たちを流されていたりする。それを信じるかどうかなんて、私には関係のないことだから。…ただ、私は。


「いいじゃない。私は東条のこと好きよ?」


本気で彼のことが好きだから。

それだけで、こうする理由にはなるでしょう?
そう言わんばかりに私は東条に雑誌でもあまり見せない笑顔で、彼に言う。けれど、日ごろの私の行いのせいか、『そういうのはいいから』と言う。

けれど、私は見逃さなかった。少し彼の顔が赤くなっていたことを。…ねえ、東条。私は好きよ。本気であなたが好き。…信じてくれなくてもいいから、嘘でいいから、このポジション、私にちょうだい。




君は知らない。

俺が美しすぎる君を、本気で好きだってことを。




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