叶うことなどない、愛は行方知れずで。

5時になった。
オフィス内には、5時を知らせる放送がかかる。
それと同時に溜息が出たのは言うまでもないはず。

ああ、憂鬱。
そう思いながらも、私は帰宅準備をする。

「もう、いいなあ…綾華ったら、あんなイケメンの日向 龍也と今夜は…?」
「もう、冗談やめてよ!そんなわけないでしょ?ただの話よ、話!」

『あーあっ、今日弁当持ってきてればよかったなあ』なんて言う彼女は、同期でプライベートでも仲がいい美都【みと】。
某有名大学卒で、この会社に入ってきた彼女とは少し年は違うものの、とても気の合ういい友人で、いつも一緒に会社帰りには飲みに行ったり、ショッピングしに行ったりしている。

そんな彼女は、冷やかしたようにそんなことを言うが、私は本当に本当に本当に憂鬱で仕方無いのだ。
少しは私の身も案じてほしい。

「美都だって、今日は彼氏とデートなんでしょ?もう、いいなあ…羨ましすぎるよ」
「何言ってんのよ、綾華!私には綾華のほうが羨ましいっての!」

今度紹介してよね!と言って、美都は軽い足取りで『お疲れさまでした!』と部屋を出て行った。

ほらね?
私にはそんな足取りでここを出ることなんてできないよ。

また溜息をひとつ吐き、『お疲れさまでした』と言って私も部屋を出た。

お願いです。
私をどこかに飛ばして下さい。

そんな願いは、絶対に叶うことなどない。



mae ato
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