想いは伝えないとわからないの。

「…綾華、アタシはね?綾華が中退した時、なんで中退したのかがわからなかった。けど、龍也と付き合ってたからって聞いた時は、少しショックだったの」
「…っ」
「あんなに一緒にいたのに、なんで言ってくれなかったのって」

そうだ。
私は、林檎にも言わなかったんだ。
言わなかったんじゃない、言えなかったんだ。

もしも、私と龍也が付き合ってると知られた時、林檎も知ってたということを知られたら、連帯責任、となったときに取り返しのつかないことになってしまうかもしれない。
そう思ったら、私は言えなかった。

でもどんな理由があったとはいえども、『初めは、本当に辛かったのよ』という彼女に、私も辛くなる。
私は、自分のことしか考えてなくて、林檎のことなど考えていなかったのだから。

「でもね、綾華。アタシは綾華が幸せになってくれることが一番なの」
「…っ」
「どんな職業に就いたって、離れていたって、アタシと綾華は親友よ。そうでしょう?綾華」

でもそんな私にも、林檎はまだ『友達』だと言ってくれる。
本当に私は幸せ者だ。
ねえ、林檎。
私、林檎と知り合いになれて…友達になれてよかったよ。

「もしも、龍也のことがまだ今も好きなら、思いは伝えないといけないわよ」
「…」
「今度こそ、もうチャンスはないかもしれないわ」

元々、一般人とアイドルがこうして会話を交わすこともなかなかないこと。
次の保証は…ないと言ってもおかしくないことは私にもわかっている。

けれど、…踏み出せない。
踏み出せないのよ。

mae ato
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