全てを知る者は、シャイニーではなくて。

私は林檎と、個室のある中華料理にいる。
少し高そうなそこは、林檎行きつけで、林檎曰く『ここの餃子は本当に美味しいのよ』という。
今日は少し給料日後ということもあって、お財布が温かかったからよかったものの、林檎が『コースで』といった暁には本当にびっくりした。
私の不安が伝わっていたのか、『大丈夫よ、心配しなくても。私が奢ってあげるんだから』とアイドルスマイルをかましてくれた彼女。
そんな彼女に若干、距離を覚えたのは言うまでもない。

同じ学び舎で学んだ彼女と私は、こんなにももう距離ができている。
それを身をもって実感させられた。
それは勿論、―――龍也とも、だ。
だからやっぱり、さっきのはやっぱり間違ってなどない。
そう思った。

「綾華は何の職業に就いてるの?」
「事務だよ」
「ええっ、嘘!」
「本当だよ、失礼だなあ、林檎はっ。パソコンだって今では社内でもやり手って評判なんだからね!」

『あの機械音痴の綾華がねえ…』という彼女は本気で信じてなかったようだ。
林檎がそう言うのも無理はない。
確かに私は酷かった。
何度早乙女学園のパソコンをフリーズさせたか。
何度音響機器を壊しそうになっただろう。
その度に龍也や林檎に助けてもらって、笑って終わっていたけれど。

だから、早乙女学園を退学してからの私は、本当に苦労した。
大学へ行くために自己流で勉強してぼちぼちの大学に進学し、パソコンも一からの為、パソコン教室に通い詰め、そして今がある。

「龍也が聞いたら、きっとびっくりするわね」
「龍也は知ってるよ、だって会社まで来たもの」
「え?!」
「…え?」

なになに?何か私、間違ったこと言っただろうか。
そんな視線を彼女に向けていた。
すると、

「シャイニーはさすがに綾華の勤め先までは龍也といえども教えなかったわよ」
「え…」
「…龍也、さては調べたな…?」

『綾華のことが気になって、何度も社長に聞いた。『今、綾華は何をしているのか』と。でも、何も教えてはくれなかった。』
それはあながちそれは間違っていないようだ。
でも、
『それがだ。一昨日突然社長から呼び出されて、『Miss.桐沢のところにこれを届けてクダサーイ』とかって呼び出されて、一瞬時が止まったような感覚に陥ったよ』
って言っていた。
どういうこと…?

「…シャイニーが勤め先なんて龍也に教えてないわ。ただ、手紙をシャイニーが渡しただけ。シャイニーが綾華に電話して、龍也に持って行かせるだけだったの。なのに…探偵でも雇ったんでしょう」

『全く…綾華のことになったらすぐ目の前が見えなくなるんだから』と言った林檎。
…つまりは、龍也は私の居場所をもう突き止めていたということ。
一体、

「…何のために…?」

それが私はわからなかった。
だって、わからないんだもの。

「…え?」
「だって、私はもう龍也とは終わってるのに…」
「…本気で言ってる?綾華」

ウーロン茶を飲もうと伸ばした手を止めて、私に向かって真剣な顔で聞く林檎。
そんな林檎の姿に、私は戸惑いを覚える。
本気って…何があるというの?


mae ato
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