スクリュードライバー
場違いだ、早く帰りたい、そう思って俯いた。うぇーい!と盛り上がる飲み会…所謂合コンというやつに1番似合わない私が参加している。
それは、もちろん人数合わせで断れなかったから飲みなれてないお酒を笑って飲み知らない男の人達と飲んだって楽しくもないしつまらない。
そもそもこのウェーイ!って感じのノリがどうしてもダメだ、ついていけない。
「ねね、夏希ちゃん全然飲んでないじゃん!お酒弱い?これオレンジジュースだから!」
「あ、ちょっ」
「ほらほら、いっきいっき」
隣に座る男の子は私のグラスにオレンジジュースを注ぎ無理やり飲ませようとする。みんなからの視線が一気に集まって怖くなった私は目を瞑って一気に飲み干した。
目が少し回ってクラクラする…これ、ダメなやつだ…スクリュードライバーじゃんと思いつつ席を立ってトイレに駆け込む。
「夏希ちゃん、大丈夫?」
「うぇっ…だ、れ」
「カズだよ。三好一成!ごめん…吐けそう?」
「むり、わかんない」
「わかった、抜け出しちゃおっか!丁度カバン持ってきたしどっか落ち着けるとこ入ろ」
カズ…あぁ、コミュ力高いみんなの人気者三好一成が私に何の用だ…彼の周りにはいつも人がいて明るくて元気いっぱいでそれに、それに彼のデザインは凄いのだ。私には遠い遠い存在なはずなのに彼は私を軽々と横抱きにしている。
「落ち着ける場所って、ここ?優しそうに見えて結構ゲスだったんだね」
「違うから!何にもしないっ」
「まぁ、カズそういうの慣れてそうだし」
「なになにー?夏希ちゃんは来るの初めて?」
「うるさい、ある」
連れてこられたのは綺麗なラブホテル最初はビジネスホテルかと思うくらい綺麗な場所だった。いい人と思って油断した、なんでラブホテル…まぁ、そうだよね、落ち着ける場所に行こうなんて信じた私が悪かった。
だがしかし、カズは本当に手が出す気がないようでソファーでスマホをぽちぽちと、いじるだけで私が寝ているベットへは近付こうともしなかった。
「夏希ちゃんってさ、合コン興味無さそうだけど、無理やり連れてこられた感じ?」
「そうだよ….それ以外ないじゃん」
「やっぱりー?俺が夏希ちゃん連れてきてくれなきゃ合コン参加しないって言ったんだよね!」
「どうしよう、ぶん殴りたい」
「まぁ、待って待って!話してみたかったんだよね、けどずーっと、話せなくてさ」
「カズは人気者だからね」
「夏希ちゃん、メガネも取って髪も切って服も変えたら?なんでそんなに可愛いのに隠してるの?」
カズは真っ直ぐ私を見つめてそう言った。それは、もちろん目立ちたくないだけだ、こんな大学にいたらそりゃみんな派手だし目立つだけれどももう目立ちたくないのだ。私は平穏な日々を送りたいだけなのだ。
「私は、平穏な日々を送りたいだけ…」
「それは、自分の意見を言えないから?知ってるよ俺、夏希ちゃんが入学した時にすごく可愛かったこと」
「………自分の意見が言うのが凄く怖い…また、みんな離れて行ってしまう…友達を作って失うのが怖い」
相当酔ってしまった…言わなくてもいいことをぺらぺらと口から出てしまう。気付けば涙も出てきててソファーにいたはずの、カズは私の頭を優しく撫でていた。
「でも、まぁ俺は夏希ちゃんの事入学した時から大好きだから!」
「はぁ!?」
「ずっとずっと俺は、夏希ちゃんを手に入れたくって!話してみたかったし!」
「はぁ!?」
「照れてる、照れてる!」
「照れてなんかない、てか、近い」
「夏希ちゃんってツンデレだよね?あ、そうだ夏希ちゃんってセッツァーと仲良いよね?付き合ってる?」
「セッツァー…?あぁ、万里?付き合ってないよ?そもそも付き合ってたらこんなとこ来ない」
「良かった」
「カズってチャラいよね」
「オレ!?チャラくないって!実はめっちゃ俺マジで真面目だから!なんならずっとガリ勉だったから!」
「知ってるよ、真面目だよね」
「オレのこと嫌いなの?」
「うーん、気になってる」
「じゃあ、なんならオレと付き合っちゃってよ!」
「ほら、やっぱりチャラいじゃん」
「好きなんだ…夏希ちゃんが取られそうでオレ、焦っちゃった…早いかもしれないけど、付き合って?」
そう言ったカズの目を見れば狼狽えてるのが分かる、カズの首に手を回してキスをすれば、私たちの身体はベットへと沈んでいった。
「うわ、三好さん朝帰りッスか?あーーー…上手くいったんスね良かったじゃないっスか」
「セッツァーの言う通りにしたら付き合えたっ!マッジでテンアゲすぎ!今なら死んじゃう」
「三好さん恋愛では結構奥手なんスね、意外っすわ」
「みんなに、女の子落とす時はセッツァーに聞いてネ!って拡散しとく!まっじで感謝!ありがとねー!」
「はぁ!?三好さん!ちょっ!!」
「やっぱり…シモの病「んだと!?兵頭てめぇ!!」