キラキラ輝く
ずっとずっとキラキラした青春を送ってみたかった、漫画で見たようなかっこよくてキラキラした主人公に可愛くて素敵なヒロイン。そんな青春を夢見てたのに現実はキラキラとかけ離れた青春真っ只中である。
「今日も休みか続いてんな」
「あー?なんだっけ?劇団?はいってるんだっけか?」
「はっ、結局ズル休みで終わるな」
クラスメイトがそうボソボソと話すのを睨みつければそそくさと出ていった。担任から預かった九門に渡すプリントを鞄に詰め込んで私も教室を出る。
「ズル休みなんかじゃねぇってよ。体調壊したらしいわ」
「あぁ、そうなの?九門の事だからアイスの食べ過ぎとかで寝込んだかなにかでしょ?」
「さぁな。お前は委員会の当番だっけ?この暑いのにご苦労様。九門の補習プリントお前が届けんの?」
「担任に渡されたし行くつもり」
「そっか、まぁ気をつけてな俺部活行くわ」
「ありがと、山口」
「あ、夏希。九門の体調がよかったら部活終わってからだけど、祭り行かねぇか?」
「うーん…じゃあ、浴衣着ていく」
山口と別れて急いで家に帰ってドアを開ければ母がニコニコと笑いながら今年も行くんでしょう?と浴衣を準備していた。脳天気な母親は楽しそうに山口君?兵頭君?と無粋な質問を投げかけてくる。
「はい、できた」
「ありがとう」
「きをつけなさいね」
浴衣を着て電車に乗り天鵞絨駅で降りれば、相変わらず夏祭りを予定しているからか人が多い。目的地のMANKAIカンパニーの寮へと付けば九門と仲のいい莇君とばったり入口で会った。
「どもっす…なるほど、そういうこと」
「え?」
「あ、いやこっちの話」
玄関でいいと言ったのに暑いだろうと言うことで莇くんと臣さんに連れられ談話室で待たせてもらって少ししたら九門がバタバタと入ってきた。
「ちょっと!!九門!着付けまだ途中だって言ってるでしょ!?ちょっとは大人しく待てないわけ!?」
「ああ、幸ちゃんごめんって!」
「ふーん、いいんじゃない?ほら、帯締め終わったよ」
プリントありがとうと嬉しそうに笑った九門に安心した。一時期からずっと熱が下がらなかったり苦しそうにしてたからまた同じことになったらどうしようと心配したけれど今のところ元気そうで本当に良かった。
無事九門とも合流出来て寮から出て出店の方へとゆっくりゆっくり向かう。
「ごめんな、また俺心配かけたよな」
「いつもの事だからもう慣れちゃった。だけど、無理はしないでね?大丈夫?」
「うん!めっちゃ元気!夏希の可愛い浴衣姿も見れたし!」
「ありがと」
九門は毎度毎度ずるい。こうやって欲しい言葉をスラスラとくれるから勘違いしてしまうのだ。
「夏希ーっ!欲しいって言ってたやつここにあるぞー!」
美術部の私と元野球部の九門接点なんてほとんど無かったはずなのにそれは突然やってきて美術部の部室に野球ボールが入ってきた事が初めての出会いだった。
その時から九門がボールを投げる姿がとても綺麗でかっこよくて見惚れたのを覚えている。
「ほら!この色鉛筆欲しがってたやつだろ?俺頑張って取る!」
ストライクアウト、大人専用の場所に立って九門は構えてボールを投げる…キラキラと光ったように見えた。そう、この横顔がたまらなく好きなのだ。大きな鈴の音が響き渡り、気づけば満面の笑みで九門は私に色鉛筆を手渡したのだ。
「ありがとう」
「どーいたしまして!」
少し離れた場所にあるベンチに腰かけて花火を2人で見る。九門は嬉しそうにたこ焼きを食べながら夜空を見上げている。
「ねぇ、九門」
「ん?」
「好きだよ」
「え?」
「九門が好きだよ。色鉛筆ありがとう大切にするね」
「俺から言おうと思ってたのに…俺も、夏希が好きずっと、ずっと好きだった」
貴方の笑顔をこれからもたくさんたくさん横で描きたい。笑った顔も泣いた顔も怒った顔も真剣な顔も全部全部描きたい。
九門は嬉しそうに照れながら笑った。
「もしかして、九門が熱出したのって」
「あぁ、夏希に告白するからじゃない?夏祭りは死んでも行くって言ってたし。なんでも山口ってチームメイトに取られる!ってずっと言ってたらしい」
「なるほど、それで熱出したのか」
「まぁ、でもあの様子じゃ夏希のほうから言い出しそうな雰囲気だったけど」
「なんか初々しいな」
「臣もさっさっと彼女作ってデートでも行けば?そん時にはコーデ考えるし」
「幸がいたら心強いな、助かるよ」