最後通告
「幸っ!できたよっ」
「急いで試着して確認して!」
「…大丈夫だ」
「問題なし!さすが俺!と幸!」
なんとか、みんなで協力して衣装を直せた…なんとか本番までには間に合ったけど…流石にちょっと疲れた…。
「直したおころも、よく見ねぇとわからねぇな」
「近くで見ると気づくけどね。観客にはバレない」
「それで十分だよ!幸くん、お疲れ様!」
ふと気になって太一を見ればやっぱり何かいつもと違う…元気がないのか表情も暗い…まぁ無理もないか…殆ど徹夜で疲れちゃったか。
「太一…?ねぇっ、太一っ、大丈夫?」
「おい、七尾、お前っ」
「太一、調子悪いのか?本番まであと数時間あるし、少しでも仮眠とったほうがいいぞ。ほら、行くぞ」
「あ、あ、うん」
臣に連れられて太一は談話室から出て行った。そんな2人を見た左京さんは盛大にため息を吐いた。
「みんなも少し休んで」
「リハとかいいのか?」
「今は、体調を万全にすること優先で考えて」
「わかった」
「っす」
みんな談話室から自室へと戻っていく。衣装を1着ずつ丁寧になおしていく。
「幸くん、大丈夫っ!?」
「大丈夫なワケないじゃん…はぁ…最悪…椋、片付けあとでいいから」
秋組は部屋に戻ったようで、片付けをする。悔しくて、悔しくて涙が出てくる…私がもっときちんと戸締りをしてちゃんと確認してたらこんな事にはならなかつた。スタッフ失格だ。
「夏希、片付け後でいいから一旦休みなよ」
「んーん、大丈夫だから」
「夏希ちゃん一旦休もう?昨日からずっと動きっぱなしだったしょ?無理は禁物!ゆっきーの言う通りだよ」
「カズくん、ほんと、大丈夫だからっ」
「夏希さんっ…一旦休みましょう?」
カズくんと椋の言葉を無視して片付けをする。でないと、泣いているのがバレてしまう。また、迷惑をかけてしまう。私のせいで。
「なんで、アンタが泣いてんのさ」
「…ごめんなさい…私が、私がしっかり確認しなかったら!もっとちゃんとしっかり確認して、戸締りもきちんとして…だからっだからっ」
「はぁ?なに、夏希のせいじゃないじゃん。全部私のせい?とか思ってんの?」
「そうじゃないけど!私がもっとちゃんと確認してたらこんな事にはならなかった!私の管理不足!仕事を怠ったせいなの!」
「夏希ちゃん、落ち着いてっ」
「はぁ!?誰もアンタのせいとか思ってないし全部勝手に被害妄想やめてよね!大体アンタ悪くないじゃん!」
「でもっ…幸の大事な衣装なの!こんな事!こんなっ!!」
「わかった…わかったから、これ以上言わなくていいから…それだけで嬉しい」
疲れてるだろうからってカズくんと椋に談話室へと出されて幸に手を引かれるまま201号室へと入る。天馬は仕事でいないらしく幸がため息を吐いてソファに座る。
「こっちこい」
「幸っ…」
「オレの代わりに怒ってくれてありがと、嬉しかった。でも、夏希のせいじゃない…それにオレは…嫌がらせに負けたりしない」
「うん…私ももっと頑張る、サポートする!」
「夏希、ありがと」
幸は黙って私を抱きしめたまま眠ってしまったので私もそのまま目を閉じた。
「おい、おいっ…夏希っ」
「天馬…?」
「秋組公演2時間前だぞ。幸なら任せとけ」
「ありがとうっ」
ゲネもなしに、初演ということもあって緊張していたけれど、トラブルもなく無事に初公演は満員御礼という形で幕を閉じた。
みんなの体調も心配だったけれど逆にアドレナリンがでたのかイキイキしててたのしそうだった。劇場内を見て周り確認してから、控え室に行けばみんなはぐっすり眠っている…みんな疲れたよね。起こさないようにゆっくりブランケットを掛けいく。
「終わるなりこの有様だ」
「流石にみんな疲れちゃいましたね。左京さんは大丈夫ですか?」
「あぁ、問題ない。お前は大丈夫なのか?」
「私は大丈夫ですよ!………左京さんこれ…」
「はぁ…ファンレターではなさそうだな今度は衣装だけでは済まないゾ……」
「また…脅迫状…警察に相談したり…セキュリティ強化しましょう…これ以上は黙ってられません」
「いや、その意味はおそらくない。お前は何もしなくて大丈夫だ」
「え?」
どう言う意味か分からずモヤモヤしたけれど、左京さんに任せろって事なのだろうか?何もしなくていいと言われ少し落ち込んだがこれ以上何かをする気にもなれず控え室の扉を閉めた。