ステゴロの絆
チケット販売が開始したため今日の稽古は、ストリートACTをしながらのチラシ配布する事になったのだ。やっぱり土曜日のお昼は人が多い。
「そういえば、先週から始まったんだっけ?」
売れてるのか?」
「春組と夏組のおかげで固定ファンもついてきたから初動はかなり上々だよ。まぁ、でも約束は千秋楽完売だから…まだなんとも」
「そうだね、まぁこういった厳しい条件があるので、今日は頑張って宣伝していこうね!」
「っていっても、この人数だとまた遠巻きにされるんじゃないかな」
確かになぁ…もう早くも私達の周りに不自然な空間か出来てて誰も近付こうとしてこない…まぁそりゃそうだよね…言い方悪いけど太一がいてくれるから何とかなってるけどほとんど犯罪者集団って感じの見た目だし。
このままだとチラシ配布どころじゃないのでグループを作る、結局部屋組事に別れることになり左京さんはいづみさんと一緒、私は万里と十座だけじゃ不安でしかないのでお目付け役として2人について行く。
「ひぃっ………!」
「な、なに!?」
「チラシだ」
「あ、は、はぁ…」
「びっくりした…刺されたかと思った」
万里はあの至の爽やかスマイルのような雰囲気でチラシを配るが十座は口下手なので今にも人を食べそうな勢いである。まぁ、なんとなくこうなる事は目に見えてたからいづみさんは私をこの2人任せたんだろうけど…。
「おい、てめぇ、いい加減にしろよ!」
「何がだ」
「てめぇと一緒じゃいくらやっても終わらねぇよ!どうすんだよ!?」
「ストリートACTで人集めりゃいいんだろ」
「あ?あー、そーいや監督ちゃんが言ってたっけか。よし、やるぞ」
ストリートACTをやってみるがどう考えも2人の掛け合いがコントにしか見えなくって笑ってしまう。あぁ、面白い。
「んだと?さっきから文句ばっか言いやがって」
「やんのか、コラ」
「なめてんじゃねぇぞ、コラ」
「お、ヤンキーものがはじまった!」
「面白いじゃん!」
「あぁ?なめてんのはどっちだボケ」
「あぁん?てめぇに決まってんだろワンレン」
「ワンレン悪口に使うな、ハゲ!」
「MANKAIカンパニーです!近日公開予定!なんて素敵にピカレスク上映します!チラシどうぞ~」
2人がぎゃあぎゃあ言い合ってる間にチラシを配る。うーん素でストリートACTやっちゃうとかもう…もしかしていづみさんこれが狙いだった?まぁ、どっちにしろ2人の喧嘩のおかげでチラシはけたからいいんだけれど。少し休憩するため私は自販機でドリンクを買う。
「万里もあんな茶番に付き合うとはなー、各落ちたっつうか、キャラ変わったよなーかっこわりぃ。うけるわ」
「黙れ……黙れって言ってんだよ!!」
「はぁ?おーこわこわ!暴力カンパニーだって拡散しようぜ!動画撮れ動画!!」
あまりにも腹が立って十座の前に立って睨みつければ2人は目を丸くして私を見た。万里の腰巾着だったくせにうるさい。
「最低。こんな事でしかストレス発散できないわけ?邪魔なんだけど帰ってくんない?」
「はぁ?なに?碓氷ちゃんまで万里と一緒に仲良くしちゃってんの?ウケるんだけど!」
「それの何が悪いの。私がきめて万里と一緒にいるんだからアンタ達にバカにされる覚えない」
「んだと!」
そう言った瞬間もう1人のやつに抱き寄せられて再び十座は殴られた。腕の中でもがくがビクともせず十座は黙って殴られる。
「ほらほら~お前らの姫ちゃんが攫われちゃうぜ~?O高最強の不良がヒヨってんじゃねーよ!」
「今ならボコれんじゃね?」
「離してっ!やめてっ!!離してよ!もういいでしょ!」
「おら!やり返してこいよ!マジでサンドバッグじゃん!!ウケるんだけど~O高最強完封記念イエー!」
「万里っ!!」
人気のないベンチで休憩してるから聞こえるか分からないがダメ元で大きい声で叫べば万里が遠くから走ってくるのが見える。
「夏希っ、おい!何してんだてめぇら!」
「あぁ?んだ万里戻ってきたんかよ。一緒にやる?今ならO高最強余裕っしょ?ってかO高最弱か!」
「万里、お前はコイツとヤったんだろ?オレも1回夏希と、ヤってみたかったんだよなぁそろそろ貸してくれや」
「ふざけんな!!」
「んだよ、もしかしてマジでこいつとつるんでんの?まさかの友情ごっこかよ~泣けるな」
「やっぱキャラ変わったよな~うざキャラ?」
「………黙れって言ってんだろ…夏希を離せっ」
「はいはい、お友達の万里ちゃんの悪口ゆるちまちぇんってか?手も足も出せねぇくせに、さっきからよく言うよな」
「てめぇら、マジでぶっ殺す!!」
あんな怒ってる万里を初めて見て、少し怖いと思った瞬間に掴まれていた手が胸あたりに触れて怖くなる。だけど、ここで喧嘩したらMANKAIカンパニーみんなに迷惑がかかる。
「万里っ!!大丈夫、大丈夫だから!!」
「やめろっ、摂津!」
「お巡りさん!こっちです!こっちで喧嘩が!女性も襲われています!」
私を無理矢理羽交い締めにしてた奴は慌てて私を万里のいる方へと押され2人はそそくさと逃げて行った。なんだか落ち着かなくて体を何度もさすってしまう。
「……ふう、大丈夫?」
「おい、夏希 怪我は?大丈夫か!?」
万里が黙って私を見つめ優しく抱きしめる。今は大人しく万里に甘えて体の震えを抑え込む。
「警察は?」
「あれは、こういう時の常套手段」
「でまかせか」
「ボクの演技もまぁまぁだったでしょ?二人の友情本当にドラマみたいだったよ…」
そう言われて2人は嫌悪感を示したけれどどこか嬉しそうだった…震えもおさまってきて綺麗でどこか中性的な男性に向き直る。
「ふふ…ボクには羨ましい繋がりだった。これ、キミたちの劇団のチラシ、もらっていってもいいかな」
「も、もちろん。助けていただいてありがとうございました」
「いいんだよ、それじゃあ舞台頑張って。キミは一応病院行った方がいいよ。それに、彼女大切なら手放したらダメだよ」
そう言って綺麗な派手な女性と街の中へと消えていった。なんだか独特な人だったなぁと思う。
「おい、夏希怪我はねぇのか?」
「私のことより、十座の怪我だよ…近くにいたのにごめんなさい!」
「いやいや、お前のせいじゃないだろ」
「私が喧嘩ふっかけちゃったから…」
「お前のせいじゃねぇーよ」
困ったように十座は笑って私の頭を優しくポンポンと撫でた。そんな万里は相当不機嫌になって私を抱き寄た。
「おい、本当に大丈夫なんだな?」
「大丈夫だって、言ってる」
「………悪かったな…」
泣いてる私を優しく抱きしめて、万里も十座もわ困った様に笑った。