頼れる居場所
「はぁ…こんな事してる暇ないんだけど…」
「なんて?」
「姉貴が悪い」
そう言っていかにも怒ってますと言わんばかりの空気を作る茅ヶ崎至と我が弟真澄…最近2人が似てきたような気がして至極面倒なのだ。
「まぁ、あの服は文化祭では着ないからもう1着幸が作ってくれてるらしいからそれ着るよ」
「いや、そこじゃない」
「え、じゃあなに…もういいかな?仕事がたくさん残ってるんだよ」
「いや。そもそもの話男の前でそれを着るってのがダメな話でしょ?」
「今回ばかりは同意見」
「よく、海許可したっスね…」
「それとこれは別。あの時はオレいたから守ってあげれるでしょ?でも今回は秋組だけだったんだよね?」
「いつも言ってる、男は狼だって。なのに姉貴は学習しないそれに秋組は危ない」
「ちょっと待って、アンタら秋組に関して信用ゼロだな」
「もー、わかったから、反省してます。はい!これでいいでしょ?離してよ~」
右と左で至、真澄にがっちりとホールドされ至極面倒だ…もー!いろいろやる事やりたい事だってあるのだこれじゃあ仕事にならない!
「まぁまぁ落ち着いてください。夏希ちゃんは、幸くんに作ってもらった手前着ないと失礼だと思ったんだと思うんだ。夏希ちゃんの、優しいところオレは好きだよ。それに至さんと真澄くんも夏希ちゃんの、可愛い姿見たかったんだと思うよ」
「うおー、すっげぇ綺麗にまとめた」
「おひたし、おひたしだよ~」
「ってうわ…至さん、真澄なにやってんの…」
「おい、万里お前だけ可愛い夏希を見てずるい、写真もっとよこせください」
「日本語変っすよ…わかりました、写真はあげますから離してやってくださいそろそろキレますよ」
「だいたい、私はこう綴の創作意欲が湧くかなぁって写真を送っただけなのに…なんでこうなるかな…」
「あれは、良からぬものが出来上がりそうなので却下」
「確かに衣装はセクシーだけど可愛さもあるんだよ?だって幸のオーダーメイドだもん。あーあ…男にはわからないんだよ」
「だからお前はすぐ、痴漢とかストーカーとか変な奴に追っかけ回されんだよ」
「「「「「あ??」」」」」
そう言って物凄い剣幕で振り返ったメンバーにぎょっとした。それまで静かに聞いていたであろう左京さんや、臣、幸までもがこちらを見る。
「はぁ?痴漢?お前どういうことだ」
「ちょっと、そんな話聞いてないけど」
「誰にやられた?わからなかったら、特徴だけでもいいぞ」
「み、み、みんな!夏希チャンがひいてるッスよ!!」
「今日はもう寝マース!おやすっ!!痛い!痛い!ちょっと!離してっ!」
「離すわけねぇだろ?詳しく聞かせろ」
乙~とか言いながら談話室を出ていく万里に怒鳴りつけたが虚しく奴は悠々と部屋から出ていった。あいつ…マジで覚えておけ!臣特性プリンを万里の分までたべてやるから!!
「夏希ちゃん、痴漢って何の話かな?」
最近まで気付かなかった事がある。咲也についてである…咲也達と一緒に住み始めて早半年1番怒ったら怖いのは咲也なんだと今日初めて知った。
そりゃもう怖いよ…あの咲也が目が笑っていないのだから…本当に本当に怖かったのでこれからは正直に話そうと思う。
「ホント、腹立つ。なんであんなこと言うの!?意味わかんない!!腹立つ!!」
「ああ?ぎゃあぎゃあうるせぇな」
「はぁ!?万里のせいじゃん!!わたしめっちゃみんなから怒られたんだからね!!危機感ない!とか自分の事わかってないとか散々!!確かに、私は可愛い!当たり前じゃん!真澄の姉なんだから!!」
「え、なに?自慢?うっざ」
「いやもー、この際それでいいわ。自慢でいいわ!でもみんなに迷惑かけたくないの」
「んだよ!ぎゃーぎゃーうるせぇな!!きーきー喚くな」
「おい、オレは迷惑だとは思ってねぇ。どーせ摂津のことだ。お前の事が心配過ぎてここにいる奴らにお前がどんな目に遭ってるか認知して欲しかったんだろ」
「………万里そうなの?」
「はぁ…だっる。じゃねぇーとお前誰の助けも借りようとしねぇだろ?お前マジで危機感ねぇから気付いたら手遅れなんぞ」
「まぁ、夏希には貸しがある。何かあったらなんでも助けてやる」
「貸し?」
「貸し…?あぁ、朝練のこと?」
「朝練?」
「うん、不真面目万里だった時にね、一緒にコソッと朝練習してたんだ」
「ああ、いろいろと助かった」
「ふーん」
ちょっと拗ねた様子だけど、どこが嬉しそうな万里に笑えば万里も良かったなと言って笑った。