男を侮るなかれ

「おはよう、万里、十座早いね」

「コイツに5時に起こされたんだよ」

「勝手に着いてきたんだよ」

言い合いしながらも2人で準備運動してる、どうやら万里と十座に心配はしなくていいみたいで安心する。

「朝練頑張ってね!私も朝ごはん作ってくる!」

「おう」

「楽しみにしてる」

そう言って稽古場を後にして朝ごはんを作る前に洗濯機のスイッチを入れる。

「夏希 今いい?」

「うん、どうしたの?」

「衣装合わせ一緒に来て」

丁度朝ごはんも作り終え幸について稽古場へと向かえば片付けているようだった。朝練は終わったようでちょうど良かった。

「おつかれー」

「あれ、幸くんに夏希 ちゃんどうしたの?」

「衣装できたから、試着してみて」

「もうできたの!?早いね」

今回は既製品のアレンジだったらしく、かなり前倒しで出来たようだ。それに加えて私の服も作ってくれたらしいので楽しみだ。

「おおー!かっこいい!」

舞台に合わせてレトロなテイストがはいっててかっこいい…スーツの男の人ってかっこよく見えるよね。幸の拘りがつまった素敵な衣装だ。

「あ、カントク。夏希 にも今回作ってるんだけど手伝ってあげて」

「そうなの!?もちろん!」

男性陣は稽古場で着替えてもらい私達は倉庫へ移動する。幸ちゃんお手製のものだということで私もいづみさんもテンションが上がる。

「どんなのかなぁ?」

「文化祭で着れる衣装作ってくれるって言ってたから…どうなんでしょう?クラシカルメイド服だと嬉しいなぁ」

「いいね!絶対似合うよ~」

2人でカバンを開け、時が止まったように2人して固まってしまった…マジか…確かに言った!言ってしまった!!布面積少ない方が楽だと!!だがしかし!これは、ちょっとえっちだよ…そうだよ!幸ちゃん!?

「ちょっと…うん…これは…セクシーなやつだね」

「私が悪いんです…その、なんというか…幸ちゃんに文化祭の制作教えて貰ってて…その布面積少ない方が楽だとか…あぁ…」

扉の前ではまだ?と急かされ慌てて着る。いづみさんは可愛いそして…食べちゃいたいとか訳分からないことを言い出した。

「こんな姿で出したくないっ…だめ!!食べられちゃうよ!!幸くん!ちょっとこの衣装は可愛すぎてダメだよ!」

「はぁ!?俺が作ったんだから当たり前でしょ!エロかわいいにしたんだから!ほら、さっさっと出てこい!」

バンっと扉を無理やり開けられ稽古場へと連れていかれる…ああ、もう最悪だ。恥ずかしい…こんなことなら昨日臣特性のマフィン3つも食べるんじゃなかった…

「お前らっ、ふざけてねぇで…っておい、瑠璃川…お前なぁ…」

「うわぁ、やっぱお前スタイルいいよな」

「万里うるっさい!みんな似合ってる…かっこいいてか…臣が意外と似合ってる…」

「うん、オカン臭消えてるでしょ」

「夏希チャン…エロいッス!!」

「お前っ…そんな格好してて寒くないのか?」

「寒いよっ!」

胸が強調されたメイド服でもちろんウエストも出ていてミニスカだけど、幸ちゃんクオリティでもちろんちゃんとパニエもあるおかげかふわりとしていて可愛らしい。頭のホワイトブリムはとても可愛らしい。

「夏希も似合ってるな」

「臣もね」

「ちょっと、夏希 銭ゲバヤクザの隣に立ってみて」

「え?うん…」

そう言って左京さんの隣に立てば困ったように頭を抱え始めた。

「ぶはっ…ちょっ、腹痛てぇ…やべぇ奴だろ。どー考えてもやべぇボスだわ」

「確かに…左京さんの専属メイドって感じするな」

「左京にぃずるいッスよぉ~」

「ずるいのか…??」

「はぁ…夏希お前、文化祭でそれは着るなよ。寮内のみ許す…が、瑠璃川ふざけるのも大概にしろよ。コイツ、なんもわかってねぇんだから」

「ハイハイ、ちゃんと文化祭用は準備してますよ」

大きなダンボールを持った迫田さんがウキウキで稽古場に入ってきた。あぁ、そういえばおもちゃの銃を発注したんだっけ?なんでも、安くていいお店があるって迫田さんが教えてくれたから任せることにしたのすっかり忘れてた。

みんなが銃を手に取りまるで、本物かのように装備していく。幸ちゃんは笑顔で私に銃を持たせる…なんだか、ちょっとコスプレイヤーになった気分だ。

「その衣装に持つとはまるねー…夏希
ちゃん…できれば写真撮りたい…可愛い…」

「おい、お前なぁ…」

「でもっ、俺っ!カントク先生の気持ち分かるッス!あの銃で撃たれたいッス!」

「ドMか」

「万チャンにはわかんないッスよ!夏希 チャンって欧華高校でも有名なんスよ!」

「へ~夏希が?」

「そうッスよ!めっちゃ、可愛い子がいるって!皆に自慢したいッスよ~一緒に住んでるって」

「褒めても何も出ないよ」

「夏希 も衣装来てるようなモンだし…こうやって見ると完全に犯罪者集団だな」

「はは、物騒な感じだよな」

「臣…その姿で銃持ったま笑ったらめちゃめちゃ怖い…やだ….やっぱり私オカンな臣がいい」

「ええ、酷いなぁ…もう一度言ってごらん」

「ほらぁぁぁ!!臣が怖い!!いつもの優しい臣じゃなくなってるんだけどっ!」

「なんか…夏希 が犯罪者集団のスパイに見えてきた…」

なるほど…綴が喜びそう…プロットになるかな?そう思っていづみさんに写真を撮ってもらって綴に送ると電話がかかってきた。

『馬鹿!!今すぐ脱げ!なんて格好してるんだよ!つーか、左京さんいるなら止めろよ!つーか、幸あのバカ何考えてんだよ!夏希っ!おい、聞いてんのか?』

『あー、うん!じゃあね!』

『あ、ちょっ!おい!!』

なんでかすごくすごくめんどくさい事になりそうだ、やばい、プロットのためと送ったのがやばい事になりそうだ。

「おい、夏希 」

「なに?万里」

「ぜってぇ、学校で着んなよ」

「わかってるって…心配性だな」

「はぁ…お前全然自分の事わかってねぇな…お前は可愛いんだよ。だから、男にすぐ目つけられんの…危機感ちょっとは持てよ」

「いいよ、別に。これからは万里が守ってくれるでしょ?」

「あっ、おい…たくっ…おい!!夏希っ!!至さんから鬼電きてんだけど!!」

「え!?なんでっ!?……綴だけに送った写真がたまたま…その…真澄に見られたみたいで…その後に真澄の写真がシトロンに…」

「ドンマイ」

遠くから足音が聞こえてきて嫌になる…うん、きっと真澄とか、至とか…日曜日なのに!!!めんどくさい奴らはこういう時に限って早起きである!!!!

男を侮るなかれ

- ナノ -