退寮宣言
なんか、唐突にどうでも良くなった。夏希は 学校でも咲也とかといる。それにアイツは俺が全てって感じで1番隣にいるのも俺だったはずなのに気付けばアイツはどんどんと遠い存在になっていった。
まぁ、俺のせいで夏希 を傷付けたのは事実だ。あの日兵頭に喧嘩ふっかけなきゃアイツは怪我もしなかった。
「夏希は?」
「夏希は、朝からテンプレヤンキーとカフェに行くって出掛けたけど」
「あっそ」
「機嫌悪っ…」
イライラする。よりによってなんで兵頭なんだよ、そんなもんカフェなんて俺と行けばいいだろ。はぁ…末期だな…兵頭と夏希 が仲良くするだけで大人気なくイライラするとか…まぁアイツがいない方が都合いいか。
「えええ!?ちょ、万ちゃん出ていくって本気ッスか!?」
「何もそんな急にやめなくてもいいだろ、これからポートレイトの本番もあるのに」
「や、考えてみたら、もう兵頭とはケリついてるし。投票とかしなくても、俺の勝ちだろ?これ以上やる必要ねぇし」
「そんな…一緒にやろうよ、万チャン!」
「せっかくここまでやってきたのに、もったいないぞ」
「ま、最初から兵頭との勝負のために入っただけなんで」
「…勝手にしろ。ただ、二度とこの家の敷居をまたぐな」
「へいへい」
スニーカーはいて外に出ようとした瞬間タイミング悪く夏希 と兵頭が帰ってきやがっためんどくせぇな…だりぃ
「あ、十座サン!十座サンからもなんか言ってくださいよ!」
「万里が劇団やめるらしい」
「あぁ?どういうつもりだ、摂津」
「え…やめるって…どういう事…?」
夏希 は完全に動揺していて俯いた。確かに俺が入団してから夏希 は楽しそうだったしな、寂しいだけだろ。
「どうもこうもねぇよ。勝負はもうついてんだろ」
「お前、雄三さんの舞台はどうすんだ。半端なことしてんじゃねぇーぞ」
「芝居ではもう十分お前に買ったし、これ以上意味ねぇから」
「負けてねぇ、てめぇなんかに、俺が負けるはずがねぇ」
「は!自分の芝居見たことあんのかよ?動画でも撮ってやろうか?」
「確かに、芝居の技術はまだお前の方がずっと上だ。でも、芝居への気持ちは死んでも負けねぇ、負けてねぇ」
「……ほざいてろ、大根野郎」
「ほっとけ、兵頭。こんなのに構っても、時間の無駄だ」
「んじゃあな」
未だに俯く夏希 の頭をポンポンと撫でて部屋から出る。アイツ今頃泣いてるかもな…そう思うと罪悪感はあったがあいつの居場所は俺の隣じゃなくあのMANKAIカンパニーだ。アイツにはここがふさわしい。
そう思えば思うほど夏希 の泣き顔がチラついてイライラした。
「……夏希 チャン…大丈夫ッスか?」
「…うん…大丈夫…」
「夏希、万里追いかけるんじゃねぇーだろうな。アイツを引き止めてもムダだ」
「わかってます…でも…」
「お前摂津と親友なんだろ?引き止めに行くならお前も辞めさすからな」
「なっ!?左京さん流石にそれはっ…」
「摂津を引き止めにいくと言う事はそういう事だ。俺は簡単に舞台を投げ出すような仲間は信頼出来ねぇ…それにお前に言われてノコノコ戻ってくるやつなんて仲間にしたくねぇんだよ」
「………それでもっ…左京さん。ごめんなさい…それでも…万里は私の1番大事な人だから」
「お前も寮の敷居はまたがせない」
「わかりました」
「えー、それで夏希ちゃん出ていっちゃったんですか?もー、左京さんは意地悪なんですから」
「はぁ…人聞きが悪い事言うな…」
「左京さんは夏希ちゃんに優しいのか厳しいのか分からないですね…ほんと、左京さん素直じゃないなぁ」
「おいおい、素直じゃないのはアイツら2人だろう?俺を巻き込むんじゃねぇよ…でも、アイツを本気にできるのは十座と、夏希だけだしな」
「やっぱり優しいですね」
「うるせぇ、摂津が抜けた時ちゃんと考えとけよ」
「ふふふ、心配してませんよ。私の大事な仲間とそれに…愛しい愛しい妹が頑張ってるんですから」
「忘れていたがお前は俺より夏希に甘かったな」