甘やかして
「夏希~俺にもコーヒー」
「は~い」
「至さん、今からHELL搭行きましょーよ」
「いいけど、夏希俺にもコーヒーもらえる?」
「わかった~」
「っし。新しい武器ドロップしたんすよ。早くぶっぱなしてぇ」
「マジか。じゃ、紙装甲で行くから介護ヨロ」
「いや、流石にソロプレイは無理だから」
疲れて帰ったきたであろう至は少し考えた様子で二つ返事でいいと答えた。金晩は忙しいって言ってたしなぁまぁ…主に飲み会断るのが…って言ってた時は至らしいなぁと思った。
「みんな、ポートレイト進んでるか?」
「大体は終わったッス。でも、本番は5日後って厳しいッスよ」
「俺もこんなの作ったことないからなぁ、演出の方は何となくわかるけど」
「……演出の方が難しい」
「わかるッス」
「十座はどこで詰まってるんだ?」
「相談していいんすか?」
「内容について話さなきゃ問題ねぇだろ」
みんなに淹れたてのコーヒーを配ってソファーに座る。うん、今日もいい香り。あ、もちろん十座のは砂糖多めに入れて置いた。あまあまカフェオレだ。
「詰まってるつーか、演出ってなにすればいいかわかんねぇ」
「別に大袈裟なことする必要はないと思うけどな」
「カメラを意識するっていうか、写真にしたら映えるってポイントを作ってみるとメリハリが出るかなって思った」
「ずっと独白が続く一人芝居だからな…そのままやると5分でも中だるみする」
「……ッス!」
「おお…十座ちゃんとメモ取ってるんだね~」
「まぁな…」
「ほんとだ…書き込みすごいッス!」
「見るな」
「えぇ…夏希チャンは いいのに俺っちはダメなんすか…?」
「ふっふっふっ!十座とは仲良しなのだー!」
「仲良いことはいい事だな。練習も1番熱心だし、結果は十座が1位かもな」
HELL搭に誘われ私も一緒に103号室へと入れば早速2人は楽しそうに潜っていた。うーん、至の紙装甲ってマジの紙装甲だった…これ、万里怒るんじゃあ…?
まぁいっかとログインしてチームを組みどんどんと進んでいく。武器ドロップしないかな…
「つーか、お前は終わってんの?ポートレイトだっけ」
「まだ、手つけてないっすわ」
「マジか」
「自分の人生振り返っても、全てが楽勝過ぎて、大して印象に残ってることないんすよ」
「マジか、ゲームバランス崩壊してんじゃん」
「そーそー、スーパーウルトライージーモード。だから人生最大の後悔とか言われてもさっぱりだしま、適当に盛ってなんとかすっけど」
「最低、そしてクズ。地獄に落ちろ…なーにがスーパーウルトライージーモードだ!万里のばーかばーか!万里のウソなんていづみさんはすぐ見抜いちゃうもんねー!よっし!アイテムゲット!」
「ボキャブラリー無さすぎんだろ。アホだな」
「ふーん…まぁ、夏希の 言う通り盛ってもばれんじゃね。普通に」
「いや、ぜってーうまくやるし」
「……監督さんは騙せないと思うけどね。たぶん」
「……この、アホはともかく、至さんがそう言うの意外っす」
「アホ言うな!アホって言う万里がアホなんだよ」
「そう?ま、それなりに頑張っとけよ、でないと、ココ潰れるし」
「そうだよー?もう家解約しちゃったから家なき子なっちゃうんだから」
「へーへー、頑張んなくてもダントツっすよ」
「……あーやばーい死んじゃう…」
「……あ、やべ。俺も死ぬわ」
「ちょっとおおお!?至さん、マジで装備カスじゃないっすか!夏希 なんでヒーラーのお前が先陣切ってるんだよ!」
「だから言ったじゃん、このキャラレベラゲ中」
「………えへへ」
「ありえねぇ!!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐこの時間が楽しい。いつしか、引くだけだった私は2人に誘われてやり始めたが結構面白かったのでついつい楽しんでやっている。
「はぁ…静かと思ったら寝やがって猫か」
「天使じゃん、寝かせてあげな」
「至さん、夏希 に甘すぎません?つーか、ここの劇団員みんな夏希 に甘い」
「そう言う万里もだけどね…万里さ、スーパーウルトライージーモードとか言っちゃってるけど夏希 は手に入れれないわけだ」
「こいつは、ただの親友なんで」
「へー、じゃあ俺が本気で狙っちゃっていい?」
「…え?嫁って言ってたの冗談かと思ってたんすけど…ガチなんすか…?」
「え?うん、ガチ。可愛いし、美人だし、ちょっとわがままだけどしっかりしてて芯あるし…料理できるし完璧じゃん」
「え…マジすか?」
「うん。マジで嫁に欲しい」
「はぁ?ダメっすよ!」
「……万里も可愛いとこあるんだ」
「はぁ…だから嫌だったんすよ…めんどくさ」
「大人はめんどくさいよ、そしてうざい。…でもまぁ…夏希 はお前の事心配してるよ」
「あぁ、もう!わかってるっすよ!さっさっと潜るっすよ!」