恋について・秋
「ただいま~」
おかえりと~と皆返事をくれる、シトロンと買い物に行ってたはいいが商店街のマダム達に捕まって私だけ先に寮へと帰ってきたのだ。
「実は…小さい頃隣の家に住んでてた初恋の子に似てて…その子もちょっと口が悪くて俺はいつもチビって言われてて…でも裁縫とか編物が得意でマフラーとか編んでくれたりしたッス!…女の子なのに自分の事オレって言うところもそっくりで」
「そこまで似てることなんてあるんだなぁ」
「えーと、それ……」
「これは、言わない方がいいよね」
恋愛トークだろうか、男の子もするんだなぁとちょっと嬉しくなって盗み聞きしてしまう。太一が言っている女の子はきっと幸なんじゃないかなぁと思ったけど言うのをやめた。綺麗な思い出話をぶっ壊すほど野暮じゃないし。
「いつか、あの子と再会して俺っちの芝居観てもらいたいなぁ…いや絶対観てもわらなきゃ」
「んじゃ、ここで突撃!初恋トーク!夏希 チャンの初恋はー?」
「前に話したでしょ?」
「逃げたな」
「そういう左京さんはどうなんですかー?」
「黙秘」
「さすが、取り調べなれしてますね」
「人を勝手に前科持ちにするな」
そう言われているのを聞いて思わず笑ってしまった。確かに左京さんが黙秘だなんて言ったらソレしか思い浮かばない。
「セッツァーは?」
「何人だよ」
「かっこいいっしょ!このあだ名」
「初恋とかねぇし…」
「えーマジで!?」
「万チャンかっけーのに、勿体ないッス!」
「恋愛とか本気でした事ねぇ」
「万里は女の子とっかえひっかえしてるからねぇ…最低だよほんと」
そう言ってお茶を飲み干せば僻みだのなんだとうるさい万里の足を踏んでやる。腹立つなぁ、アンタと違って私はしっかりしている、そう、身持ちが固いのだ。
「ヒョードルは?」
「は?」
「兵頭だからヒョードル!ヒョードルの初恋はいつ?」
「……ない」
「さすが、十座サン、硬派ッス!」
「んじゃあ、おみみは!?」
「俺は小学生の頃かなぁ、でも、あんまり覚えてないけど」
「もー、みんなドライすぎ!んー…あ!そうだ!夏希 チャンの好きなタイプはー?どんな人?」
「え、なに急に…黙秘!」
「コイツの好きなタイプは確か、年上、イケメン、頭良くて、王子様みたいで車もってる人しか好きになれないらしいぞ」
「一言一句覚えてるのね…」
思わず万里に怒りたくなったがやめた。怒ったって効果ないだろうし結局一緒なのだ。事実好きなタイプと言っても好きな人が出来たわけじゃないので正直あまりわからない。これじゃあ、好きなタイプというより条件に近い。
「はぁ…お前それは、無理だぞ」
「わかってます!冗談ですよ!左京さんまで本気にしないでください!」
「いや、いるだろ、お前のタイプ」
「え?さすがにいないよ。こんな人」
「春組のほら、至さん」
十座ってたまに思うんだけど、天然入ってるよね…うーん、確かに至は当てはまるかもしれないけど、奴は残念だが干物だ。王子様には程遠いのだ…
「姉貴があの至を好き…は、ありえない、ありえない、ありえない…」
「あーもう!余計ややこしくなってきた!!真澄、違うから!私至好きじゃない!好きなタイプって事だよ!」
「至が好きなタイプ…」
「違う!!違うってば!!」
「俺も、年上は…無理だけど、イケメンで頭良くなって王子様みたいになってそれで…今すぐ教習所行ってくる」
「ちょ、ちょっ!まっすー待って待って!教習所は18歳からだよ!とりあえず落ち着いて~だいたいの女の人は落ち着いてる男が好きだよっ」
「そうなのか…!わかった、落ち着く」
「単純すぎんだろ…」
「万里よりマシだから!」
「うるせぇわ、バカ夏希 」
ぎゃあぎゃあ万里と言い愛する。なんだかちょっと前の関係に戻れたようで少し嬉しい。
「夏希 チャンと万チャンってカップルみたいッスよねぇ」
「うん、お似合いだな」
「たしかに~そのうち本当に付き合っちゃったりして?」
「「絶対ない!/ねぇ!」」