亀吉まんじゅう

「な、な、な、ナニコレ!?え!?は、ちょっと待って、ナニコレ!?」

「夏希~どうしたの~?」

「あ、三角!この段ボールの山何か知ってる!?大量に届いたんだけど…」

「んー?あ~朝ね支配人がハンコ押してたよ~?」

「なるほど、ありがとう!!」

秋組稽古真っ最中だがそんなもの知ったこっちゃない。なんなんだこの段ボールの山はあの人また何かやらかしたに違いない。

「支配人っ!!」

ドアを開ければ左京さんに土下座させられている支配人…そのまま捌いていただきたいくらいだ。で…このポンコツ支配人…今度は何をやらかしてくれたのだろうか。もぐもぐと十座が食べているものに目をやると亀吉そっくりの饅頭がある。

「MANKAIカンパニーのお土産でも作って売上を作ろうと考えた努力は認めます。ですが、何も相談もな無しにされてはこちらも困りますよ!」

「だって~」

「だってじゃないです!せめて、これからは監督にはきちんと相談してください!」

まぁでも食べ物を粗末にする訳にもいかないし、それにちょっと可愛い感じはする。ピンクだし女性ウケしそうだけどそりゃまぁ売れ残るよね。だってMANKAIカンパニーと全く関係ないし。みんな亀吉の事知らないし。

「あっ、夏希 チャン!食わない方がいいッス!」

そう言われたが時既に遅しで食べるとピーチ味が広がって美味しい…生菓子に近い感じだ。個人的には凄く好き。ピーチ味の飲料水を思い出す。

「大丈夫、大丈夫。コイツ甘いものならなんでも食うから」

「美味しいけど…」

「2人とも4羽目だな…」

「臣クンその数え方は残酷ッス!」

「夏希ちゃんも、十座くんももしかして気に入った?」

「食いもん粗末にするわけにはいかねぇだろ…な?」

「うんうん、もちろんその通りだよ」

「十座サンかけぇッス!オトコの中のオトコ!」

私たち2人に冷ややかな目線を送る左京さんと万里はほってもぐもぐと有難く亀吉を食べさせていただく。亀吉は私に食べられるなら本望だそうだ。というか、誤解されるような言い方はやめて欲しい。

「万里はここでは勝負しなくていいのか?」

「…別に。こんなんで勝っても意味ねーし。舌バカ優勝はゆずる…お前ら、マジで単に味が気に入っただけだろ!夏希 お前太んぞ!」

「うるさいなぁ…」

気お取り直して稽古に戻ったみたいでどうやら秋組のリーダーを決めるようだ。確かに…そろそろ綴の脚本のプロットも書き始める頃だろうし。春夏同様秋組も座長、そしてリーダーという方向性に決まっていく。

「この中だと、経験や年齢からいって左京さんが適任だと思うんだけど…」

「いいと思うッス」

「いや、俺には伸びしろがない。まとめることができてもそれだけだ。若いやつにやらせろ、その方がいい経験になるし、チーム全体の成長も見込める。その代わり、サポートはする」

「……そうなのかな」

「夏希 ちゃん?」

「あ、いえなんでもないです」

なんか、左京さんが諦めた訳じゃないんだろうけど、どこが線を引いてる感じがして疑問に思ってしまう。なんだが譲ってる…?流石に考えすぎか…

「じゃあ、誰か、主演とリーダーやりたいって人はいる?」

夏組だと全員手を上げててんやわんやしたけど今回はどうなんだろうか…十座を見れば手を握りしめていて、今にも手を上げそうだった。

「この4人の中なら、断然俺だろ。監督ちゃんもそれわかってんじゃねーの?」

確かに万里の演技は上手いかもしれないけど、素質だけだ演劇の熱意はこの中で十座が1番持ってる気がするし…いづみさん次第かな…だけど、万里には演劇を好きになってもらいたいし、本気でなにか打ち込めるものを見つけて欲しい。

「おい、摂津お前、座長の責任の重さをちゃんとわかってんのか?」

「んなこと知らなねーけど…ここにいる誰よりも上手くこなす自信はある、アンタよりもな」

「いいだろう、しっかりやれよ、リーダー」

全員万里がリーダーをすることに賛成のようで秋組のリーダー、それに秋組旗揚げ公演は万里に決まった。
少し不安そうな表情をしているいづみさんと左京さんが話し込んでいると、いづみさんは少し安心したように笑った。

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