違和感とぬくもり

「はぁ……」

「ねぇ、さっきからため息ばっかうざいんだけど、そんなため息吐くなら自分の部屋でやってよね」

「カズくん…幸が辛辣だよぉ~」

「よしよし、オレが夏希ちゃんいい子いい子してあげるっ!」

「それは却下」

幸の部屋201号室に入り浸りやりたくも無い文化祭の衣装作りを任されてしまい逃げることも出来ず幸に泣きついたはいいが思ったよりもスパルタで怖い。

「だいたい夏希が、助けてって言ってきたんでしょ?ちゃんとやりなよ、ほらここも縫い目荒いやりなおし」

「やってるもん…もー!なんでメイド服なの!?バニー衣装の方が布面積少ないじゃん!!楽じゃん!てかもうスクール水着カフェでよくない!?メイドカフェなんてありきたりすぎるんですけど!!」

「高校生でバニーカフェと水着カフェはちょっとハードル高いっしょ?それに、俺は夏希がスクール水着は嫌だなぁ~そうだ、夏希ちゃんってセッツァーと同クラなんでしょ?」

「うん、そうだよ~」

「セッツァーはなんか着るの?」

「うーん…どうなんだろう…わかんない…」

「そっか~残念!もしセッツァーコスプレするなら行っちゃおっかな~と思って」

「アンタは着ないの?」

「え?私は着ないよ~だって可愛いのじゃないと嫌だもん」

「可愛いのなら着るわけ?」

「もちろん」

「ふーん、わかった俺も作る。夏希専用で作ってやるから絶対着なよ?」

「ぇぇ…幸センス抜群だから幸が直々に作ってくれるなら有難く着させてもらおうかなぁ」

そう言うとさっきまで小言が多かった幸が黙ってスケッチブックにデザインを書き出してそれに乗っかってカズまでもが書き出した…これはもしかするとデザイナー組に火をつけてしまったかもしれない…

「てか、幸~作って貰っちゃっていいの?秋組の衣装大丈夫なの?」

「速攻で仕上げるよ。女物つくるの久々だからテンション上がってるんだよね夏希 はさかっこいいのから可愛いのまで全部だいたい似合うから着せ替え人形したかったんだよねぇ捗りそうだわー」

「え…私やっぱり幸ちゃん怖いわ」

「まぁまぁ楽しみにしててよ俺もゆっきー手伝うからそこは安心して」

「なんか、もう全部怖いんだけど」

「オレに頼んだアンタが悪い」

そう言われ部屋からぽいっと放り出されてしまった。まぁいっか…幸もカズくんも楽しそうだし…キッチンに戻って紅茶を入れる。

「夏希、オレにも紅茶よろ~」

「ねぇ…万里」

「あ?んだよ」

「芝居本気なの?」

「あぁ?別に、兵頭ぶっ倒すために始めただけだっつたろ?何度も何度も同じ事言わせんな」

「でも…みんな本気なんだよ。そんな考えで中途半端で皆の気持ち掻き乱して欲しくない」

「あぁ?俺は俺なりに本気だっつーの、つーか、お前はいるの?演劇もせずに家事ばっかしてるだけだろ?」

「私はっ!」

万里にそう言われて反論は出来なくて言葉に詰まってしまった。確かにそうだ、私がここにいるのは真澄がこのMANKAIカンパニーに所属してくれているおかげで入れるだけで、本来女性は加入できない。

「ちっ、もういいわ」

「ちょっと、万里待って…」

そう言って万里はキッチンから出ていった。万里と上手く話せない、モヤモヤしてしまってなにかつっかえたような感情にブレーキがかかる。

「夏希…どうした?」

「なんでもないっそうだ綴、紅茶飲む?」

「お、おうもらう」

「夏希なんかあった?」

「え、何も無いよ。心配してくれて、ありがとう本当に何も無い」

「はぁ…バレバレだっつーの。ごめん少しだけど万里との会話聞こえてさ…夏希は後悔しないように、きちんと万里と向き合ってると思うよ」

「私は…?」

「うーん、俺もそういうのあったから気持ちわかる。けど、友達ならちゃんと向き合って、言いたいこときちんと伝えた方がいいちなみに経験者」

「綴はその友達となにかあったの?」

「まぁな…俺の話はまたこんどゆっくり話すか~ほら、もう夜も遅いし寝るぞ」

「うん、わかった」

少し悲しそうに笑った綴に違和感を感じたけれどすぐにいつもの綴に戻った。綴もなにかあったのかもしれない。そう思って優しく笑う綴の手を取った。

違和感とぬくもり

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