フォトシューティング
"オレは、課題あるから付き添えないけど、悪いけど頼むな"そう言われて、綴からお願いされた。
そう、今日は衣装を着てフライヤーや宣伝用の写真撮影日なのだが、どうやら綴の知り合いの方が撮ってくれるようで案内を頼まれたのだが緊張する…何気に綴はツテが広いような…
「すみませーん」
「あ、こんにちは。MANKAIカンパニースタッフの碓氷夏希です。本日は、よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
大変申し訳ないが、話してみるまでの第一印象は怖そう、だったが案外話してみると優しそうで物静かでいい人そうだ。
「じゃあ、案内しますね」
部屋へと入れば、皆んなが衣装を着ていてこうやって衣装を着てみんなで並んでいるところを見ると壮観だ。
「カメラマンの伏見臣さんです」
「……ども」
「ふーん、大学生ぽいしプロじゃないよね?なんか若いけど大丈夫なの?」
「中学生で衣装作ってるお前が言うな!」
「はは、たしかにプロじゃないよ。大学の写真部で綴に頼まれたんだ。でもちゃんと、仕事はするからさ?」
「ふーん」
「それじゃ、まず全体写真を撮ろうか………よし、と。一応画面でチェックしてくれるかな」
「お、いい感じー!」
一成と画面を覗き込めばキラキラと輝く皆んなが写っていてカメラの腕前は相当なようだ、これなら一成も問題なくフライヤーなどにこの写真を使えるだろう。
「みんな、かっこいい!」
「まぁ、こなもんじゃないか」
「写真使いまくって、サイトリニュしちゃおう」
「ただの、写真部のくせに結構ちゃんと撮れてるじゃん」
「はは、よかった。それじゃ、データは後で送るから」
「よろ」
皆んなはまだ、いろいろとやる事があるようでいづみさんと支配人と稽古場へと戻って行った。私とカメラマンである伏見さんと2人になってふと見上げてみた…うん、大きいな。
「伏見さん、今日はありがとうございました」
「あ、敬語じゃなくていいぞ。それに臣でいいよ」
「じゃあ……お言葉に甘えて…」
「おう、あ、帰りにちょっと劇場の方見てもいいかな?」
「劇場?もちろん」
悪いなと苦笑いした臣を連れて劇場へと入れば、臣はキョロキョロとあたりを見渡して、案外広いとつぶやいた。
「お芝居に興味が?」
「ああ…まぁな。って言っても、正確にはオレじゃないんだけどな…今後の参考のために見ておこうかなと思ってさ」
何か事情があるのか、もしくは多少お芝居に興味があるのかもしれない。そういう気持ちがあったからこそ綴の紹介でここにきてくれたのは間違いなさそうだし
「あ、そうだ、これ。いづみさん、監督から預かってきました。今日のお礼です、千秋楽のチケット…よかったら見に来て」
「ああ、ありがとうな」
チケットを渡して連絡先を交換して臣とは別れた。連絡先を交換したのを言えばかなりブーイングを貰ったけど、綴曰く臣さんなら大丈夫との事で、なんとか事なきをえた。
「あれ、みんなどうしたの?」
「夏希こそどうしたの?」
「咲也の部屋で映画観賞会してたんだけど、いつの間にかゲーム大会なっちゃったから…こっそり抜けてきたみんなは?」
「カズくんが、MANKAIカンパニー公式サイトをリニューアルしてくれたんです!」
「おお…すごい…」
パソコンを覗いて見てみれば、夏組仕様に新しくなっていて今回の物語と、雰囲気が合っていてとっても、素敵だった。三角も三角窓がよっぽど嬉しかったのだろうが、凄くご機嫌だった。
「やっぱり、カズ君は凄いね」
「わーい!夏希ちゃんに褒められるとかテンアゲすぎ!よーし!問題なければこれで公開っと!」
「待ってくれ、サイトにオレの名前と写真は載せないでくれないか」
「え、どうして?」
「天馬、なにか事情がある?」
「主演の写真と名前載せないって…意味不明」
天馬は黙って俯いている。きっと何か考えあってそう言ったのか困ったように俯いた…何か困った事になってないといいけれど…。
「今回の芝居は、今までのオレの実績に頼りたくない」
「テンテンの名前出せば、ソッコー千秋楽ソールドアウトなのに……」
「そういうのは、なんか違うだろ?」
「はぁ?いつも、俺様天下の天馬様って言ってるくせに」
「いつ言った!?」
「まぁ、天馬君がそう言うなら」
「うんうん、いいと思うよー」
「じゃあ、残りのチケットはみんなで協力して売り切ろう!」
いづみさんがそう言えば幸は項垂れて文句を言う。まぁ…たしかに天馬の名前を出せばほぼ、SOLDOUTになってしまうだろう。