恋について・夏

朝ごはんの仕込みを終えて、スマホを開けばLIMEが数件入っていた。春組のグループトークではなにやらもめているようで適当にスタンプを送る。真澄と綴が揉める事なんて今に始まったことじゃないし、至が私に対して過保護なのもそうだ。

シトロンが誤字だらけなのもそうだしそれを翻訳するのは咲也の役目だ。うん、春組は今日も通常運転らしい。

「夏希ちゃん、一緒にお風呂入らない?」

「入ります」

殆ど時差はなかったと思う。私といづみさんのスマホが鳴って見てみれば私は天馬と三角さんからLIMEが入っていた、もちろんいづみさんにも何故かお風呂上がったという謎の報告LIMEだ。

"おい、風呂上がったぞ"

"ほかほか!なう!"

「うーん、それにしてもなんでみんな急にお風呂上がりの報告してきたんだろう?」

「さぁ…あ、もしかして喉乾いたとか?」

「あぁ、なるほど飲みのもがほしかったのかな」

「お風呂上がったらみんなに飲み物持っていきますね」

「うん、ありがとう」

少し長湯しすぎてしまった。ルームウェアに着替えてキッチンに立つ。アイスレモネードを作っておいた、やっぱり役者は喉が命だ。体も冷やしつつ、はちみつは喉にもいいみたいだし。人数分注いでみんなの部屋へと向かう。

「ちょっといいかな?」

「え?あ、夏希じゃん!どったの?」

「みんなから、お風呂上がったって連絡きたから喉乾いたかなって…良かったらどうかな?」

「あ?あーとりあえず入れよ」

椋くんがさりげなく私が持っていたアイスレモネードを持ってくれて中へとどうぞと招き入れてくれる。
どうやら、ミーティングをしていたようで邪魔しちゃったみたいだ。

「ごめんね、ミーティング中だった?」

「今終わったとこ、夏希は風呂はいってたの?」

「うん、いづみさんと一緒に入ってきたよ。今は支配人が入ってると思う」

「ふぅ~ん。まぁ、いいや。とりあえずそこ座って」

「え?」

「え?じゃない!髪は女の命。ちゃんと乾かさないと傷むよ?ほら、座る」

幸のベットへと座らせてもらい大人しく髪を乾かしてもらう…なんだかいたせり尽くせり…だ。

「テンテンどしたー?」

「あ?なんでもねぇーよ!」

「あ、もしかして…夏希ちゃんのお風呂上がりにドキドキしちゃったとか!?」

「ちげぇ!うるさい!!」

「夏希はお風呂上がりも可愛いよー!それにいい匂いもするー!オレがあげたさんかくパジャマ着てくれた!」

「うん、もこもこしてて肌触りいいんだー!三角さんありがとう」

「違うよ、呼び方ー三角って呼んでくれなきゃ」

「み、すみ…」

「そう、せいかいー!いい子いい子ー!」

「とっても可愛いですね、夏希さんは何を着ても似合いそうです」

「たしかに。素材だけはいいからね、ほら出来た。しっかり乾かしなよ」

「はーい、幸はお姉ちゃんみたいだね」

「アンタが、ガサツすぎるだけ」

ふふと笑って幸にありがとうと告げて立ち上がる。
そろそろ寝ないと明日も早いのだ。
おやすみと、告げようと思ったら三角に手を握られてニコニコと笑顔で私に笑いかけた。

「夏希ー?オレたちと一緒にねる?」

「え?」

「は?」

「おお!すみー!めっちゃいいこと言うじゃん!夏希ちゃん!そうしよ!今日はお泊まり会って事で!」

「ええ、ちょっ」

「もう、逃げられないんじゃない?」

天馬はため息を吐いて電気消すぞーと何事も無かったかのように電気を消した。まぁ…本人達がいいならいっか…一人で寝るより皆で寝た方が楽しいかもしれない。三角の布団の中に一緒に入り、背後から抱きしめられる。

「おやすみ」とウトウトし始めた時だった。

「ねぇ、みんな」

「カズくんどうしたの?」

「みんな今彼女いる?むっくんはいる?」

「い、いないよ」

これが、恋バナってやつか…男の子も恋バナってするんだなぁ…なんだか意外かも。

「そんなヒマはない」

「はぁ…こんな稽古漬けだったらいても振られるでしょ」

「いないかもー?」

「曖昧ですね…!てか、いたら私と寝てるの大問題なんですけど…」

三角からするりと抜け出して隣のベットである幸の布団へと潜り込む。まぁ、基本いちばん安全だしめちゃめちゃいい匂いするし、なんだかんだはぁとため息を吐かれたけれどスペースと布団を分け与えてくれる限り嫌では無さそうだ。

「あーっ、夏希…にゃんこさんみたいに暖かかったのに…」

「私は猫か」

「夏希ちゃんは?彼氏とか、好きな人いるの?まぁでも夏希ちゃんなら引く手あまたか!」

「彼氏は今までいた事ない…だけど好きな人って言うか憧れって言うか…一目惚れした人はいる」

「そうなのか?」

「うん、小さい頃劇場で迷子になっちゃってその劇に登場した王子様に助けてもらったんだけど…その人が忘れられないんだ」

「す、す、素敵です…」

いろいろ根掘り葉掘り聞かれそうだったから目を閉じて寝たフリを決行すればカズくん提案の元合コンに行く話になっていて楽しそうだ。

「えーゆっきー可愛いからモテるよ」

「ちなみに変な想像されると困るから先に言っておくけどオレの恋愛対象女子だからね」

「幸くん、男らしいからね」

「勘違いした奴は返り討ちっしょ」

「驚かないんだ…」

「言われなくとも、お前はオレの対象外だ夏希ならいいけどな」

「聞いてないし!夏希がアンタの事相手する訳ないじゃん!このポンコツ役者」

「夏希ちゃんが彼氏いないなら立候補しちゃおっかなー!」

「夏希さんに似合う男になるまでは…立候補はまだできないです…」

「オレも立候補するー!」

「しー、夏希寝ちゃってるよさっさっとオレたちも寝るよ」

恋について・夏

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