夏の思い出

晩御飯も食べ終わって皆で片付け後まったりする。
明日にはこの合宿所ともお別れで少し寂しく感じる…ここの合宿所のキッチンがとても使い勝手がいいから恋しい…寮のキッチンもこれくらい大きいの導入してくれないかなぁ…ワガママか…

「みなさん、お疲れ様でした!今からなんですが、アクティビティを用意しましたよ!」

「アクティビティ…?」

「今から出来るものって事ですか?」

「そうですよ!夏の風物詩といえばコレ!じゃじゃーん!」

「それって花火ですか?」

花火…?花火ってもっとこう凄く大きなやつじゃなかった?なんか、これ小さいし…初めて見たかもこんな小さなやつ。

「夏といえば、花火!合宿は思い出作りも大切なんですよ!」

「おおー!確かに!いいですね」

「監督の許可も貰えた事ですし、せっかくなんで夏希ちゃんも一緒に中庭でやってきたらどうです?」

中庭にみんなで移動して支配人に言われた通りロウソクに火をつけて水の入ったバケツを用意する。小さい頃から今まで1度も花火、というのはしたことが無い。大きな花火は1度だけおばあちゃんと見た。たったそれだけだ。

「いえー!ロケット花火やろ!」

「なんだそれ?」

「天馬くん、ロケット花火やった事ないの?」

「ドラマの撮影で線香花火はやった事ある」

「おえ…一瞬にしてリア充映像が頭に浮かんだ…って夏希もやった事ないの?反対だよ!」

「私は1度もないかな…小さいの初めて見た…」

「夏希ちゃん、テンテン!ロケット花火はドカーンって爆発しちゃうんだよ!」

「ひぃ……私やらないっ!」

「そうそう、それで中から爆竹が飛び出してきて頭から降ってくるの」

幸とカズくんは笑いながらそう言った。つまりあれだ、昔見た大きい花火の小さいバージョンが上から降ってくるってことはそんなに危なくないのだろう。

「危険極まりないじゃないか!!」

「爆竹警報ー!爆竹警報ー!」

「それじゃあ、点火するよー!」

「ちょっと待て、まだヘルメットの準備が!!!」

天馬に腕引かれ思いっきり抱きしめられる。どうやら、守ってくれたみたいで良かった、私も天馬も怪我はない。爆竹が頭から降ってくることは無かった。

「うわっ!ちょっ!!テンテン抜け駆けズリー!」

「サイコストーカーにちくってやろう」

「あわわっ!凄い…少女漫画のワンシーンみたいです!!」

「天馬ー!夏希ーっ?大丈夫だったー?」

「天馬っ、苦しい」

「あぁ、悪い!」

「ごめんご!爆発ってのはじょーだんでした!」

カズくんの冗談だったようで本当に爆竹が降ってくる事はないようで安心して少し疲れた。みんなが持ってるロケット花火は色とりどりで凄く綺麗だ。天馬はもうキレている。まぁ、そりゃそうか…今回ばかりは天馬が可哀想だもんな…普通の花火がたくさんキラキラと輝いて消えていく。

「まったく…普通の花火じゃないか…」

「当たり前じゃん」

「なんだか…修学旅行みたいだね」

「まぁ、そんな感じかもな。俺行ったことねーけど」

「え?そうなの?」

「芸能活動が忙しくて、学校行事はオールキャンセルだった」

「へーさすが売れっ子」

「ちょっとさびしーね」

ポトンと地面に線香花火が落ちてしまった。私も花火をやるのはこれが初めてだ。友達という友達も出来たことがないし、小中とは修学旅行ではいつも1人で行動していた。だけど、去年は万里のおかげでとても楽しい修学旅行を過ごせた。

「オレも行ったことないー旅行費?みたいなの出なかったし」

「え、そうなんですか」

「三角って前から寮に住み着いてたみたいだけど、家帰ってんの?」

「ううん、全然」

「じゃあ、テンテンとすみーは行けなかった分思い出いっぱいつくろうねーん!」

「オレらトモダチちゃんだしさ!修学旅行みたいなモンでしょ!」

「かず、てんま、トモダチー!」

照れている天馬を横目に線香花火がまた地面にぽつりと落ちていく。なんだか寂しい気分になるなぁ…もう、記憶がうっすらとしてきた、懐かしいおばあちゃん…確かおばあちゃんは線香花火が好きだと言っていた気がする。

「じゃーん!親愛の証にいっぱつ!ネズミ花火だよ!じゃあ。いっくよ!」

「なんだそれ」

「足元をバチバチ花火を散らしながら縦横無尽に攻撃していく花火」

「ふん、また大袈裟に言ってるんだろ?もう騙されないからな!」

慌てた幸と椋に手を引かれて避難する。カズくんにいたっては、笑顔で10個付けちゃうよー!とか言い始めた。そんなにやばい、代物なのだろうか?

「ぎゃぁぁぁあぁぁぁぁぁ」

バチバチと縦横無尽に、駆け回るネズミ花火と天馬…今年1番笑わせてもらった。

夏の思い出

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