ぎこちない歩み寄り
頭を冷やさせようとの事で、暗い雰囲気の中カレーを作りできたカレーを持って天馬を探す。そう遠くには行ってないと思うんだけど…
「あ、天馬…見つけた」
「……なんだよ?」
「はい、カレー凄く美味しくできたから食べてみて」
「いらない」
そっぽ向いた天馬の横に座ってスプーンですくって口に持っていけば不服そうに少し照れながら食べてくれた。お腹すいてたんだろう、お腹がなる音が聞こえたし相変わらず素直じゃないなぁ…真澄そっくりだ。
「夏希、自分で食べれる」
「えぇ…食べさしたかったのに」
「子供扱いすんな…」
「ふふ…美味しいでしょ?」
「んっ…うまいな」
「私も美味しいなぁと思ったよ。みんなもそう言ってた幸はいづみさんのことスーパーカレー星人って呼んでたよ」
「そのあだ名で呼ばれて嬉しがるのは監督しかいねぇな」
「確かに…ねぇ天馬?明日のご飯はみんなで一緒に食べよう?天馬なりにリーダーとしてみんな事ちゃんと見てるの知ってるよ?厳しい言葉も舞台を良くしたいみんなの特性を理解してきゃ言えないもん…それに今日の稽古具体的にすごくわかりやすかったし。みんなもそう思ってると思うし、芝居の完成度も上がってきてると思う…まぁでもど素人の意見だけど…」
「まだまだだろ?瑠璃川は器用な分セリフを流しがちになる。でも動きに華がある自分の見せ方を知ってるから、舞台で映える。三好ではいい意味でも悪い意味でも適当だ人に合わせるのは上手いけど押しが弱い。でもどんな相手でもあわせられる柔軟さがある。向坂は下手くそだが努力家だ役のこともよく考えて演じようとしてる。緊張しすぎる所を直せば化ける可能性がある…斑鳩の実力は本物だ真面目にやれば俺と張るくらいの演技力を持ってるそれなのにヘラヘラしてるところがどうしようも無い」
私が笑うと天馬は怒ったように私の頭をくしゃくしゃにした。バツが悪そうに下を向いた。
「本当に天馬は夏組のリーダーだね!みんなのことすごく見てるんだね」
「当たり前だろ」
「みんなに謝ろうよ。言いすぎてごめんって…今まで通りアドバイスしてそれと同様たくさんいい所も伝えるのはどう?」
「そうだな…オレはいつか世界各国の主演男優賞を総ナメにする男だぞ。演技指導なんて余裕だ」
「期待してるね!招待してもらおう」
「はぁ!?お前をパートナーにするのか!?」
「え?あーやっぱりダメ?たくさん綺麗な人見れるの楽しみにしてた」
「お前も十分綺麗だろ?」
「え?あ、ごめん。風の音で聞こえなかったなんて?」
「気が向いたらな」
天馬は笑って着ていたシャツを私の足に掛けてくれる。夏だけど体を冷やすなだって、なんだかんだ言い方はキツいけれどそれと、同じくらい天馬は優しい。みんなもそれを知ってるはずだ。
2人で夜空を見上げて星を眺めていると天馬が立ち上がって手を差し伸べてきた。天馬の手を取って私も立ち上がる。
「戻って寝るか」
「うん、そうだね」
「おやすみ、また明日な」
「おやすみ、また明日」
朝、結局稽古の雰囲気は最悪で相変わず空気が重い。
だけど、天馬と昨日は約束したのだ、自分で行動してくれるはずだ。
「おい!」
「誰を呼んでんの?」
「全員だ!……昨日は、その…悪かった。以上さっさっとストレッチしろ!」
「あの俺様天馬様が謝るとは…」
「天馬くんも言いすぎたと思ったんだよ。幸くん」
「テンテン!全然きにしてないから、ダイジョウブ!ダイジョウブ!」
天馬が謝ってから空気が一変して稽古がスムーズにすすむようになっていった。その後は昨日話したいい所を伝える、というのも天馬なりにみんなに伝わっていそうで安心した。相変わらず幸は辛辣だけれど…お昼ご飯を作りに部屋から出た。
「おおー!!凄い!!夏希ちゃんの昼おっしゃれー!」
「あぁー!!さんかくだぁ」
「三角さん、良かったですね」
「で、夏希あのポンコツ役者に何吹き込んだの…?悔しいけどアイツの指摘って正しいんだよね」
「少し2人で話してみたの。天馬は天馬なりにみんなのことたくさん考えてたんだよ。でも、幸も天馬に怒ってくれてありがとう」
「別に。ムカついただけだから…夏希ありがとう……オムライス」
「え?そっち?」
「うるさい、早く食べないと無くなるよ」