夏組合宿
「オレも一緒に行く」
「夏組合宿だから行けません」
「じゃあ、夏組になる」
「ええ!?真澄くん!春組はどうするの?」
「大体、何で姉貴まで連れていく?」
「夏希は俺達のご飯係。監督と支配人だけじゃ毎日カレーで死ぬ」
むーっと不機嫌そうな表情の人が約2名…真澄と意外な人がもう1人茅ヶ崎至…現在劇団内では1番の年上だが実は子供っぽいのだ、なんなら椋や幸の方が大人っぽい。本人にはもちろん言わないが…
「俺にも夏希が必要なんだけど?」
「アンタ1番大人でしょ?いい大人が何言ってんの?」
「はいはい、真澄も至さんも稽古があるだろ?ほら、ワガママ言うんじゃありません」
「至、真澄いい子でお留守番しててね」
ぎゃあぎゃあうるさい2人を咲也シトロン、綴に任せて車に乗り込む。天馬は何を言うかと思ったらまさかの夏組強化合宿だなんて、言うとは思わなかった。
2泊3日の楽しい楽しい強化合宿の始まりだ。
「気をつけてね、アリババ」
「おい、ここのシェヘラザードはそんな能天気じゃない」
「はぁ?…ああ…王様にハーレム要員になれって言われてるからか」
「そうだ。脚本でそれらが明らかになるのは終盤だが、役者はそれを踏まえて演技しろ」
「はいはい」
天馬のアドバイスは相変わらずだけど具体的ですごくわかりやすくなったから幸はやりやすそうだ。シェヘラザードも凄く様になってきてるし、楽しみだ。支配人が買い出しに行くと言うので稽古部屋から出て車に乗り込む。
「稽古どうでした?」
「いい感じでしたね。天馬がアドバイスしてましたよ的確に具体的に」
「そうなんですね~なんとかなりそうですね!チケットもあの皇くんのおかげではけそうですし」
「そうですね!チケットは問題ないかと」
量が多いので手分けして買い出しを済ませ合宿所に戻って仕分けをしていく。今日のメインイベントがあるのだ。
「腹へりぺこりんこー」
「おにぎりおにぎり」
「あれ?夏希夕飯は?」
「ふふふっ、夏希ちゃんも一緒に今日はみんなで親睦を深めるためにカレーを作ります!」
「はぁ!?カレー回避するために夏希連れてきたんでしょ!?」
「で、でもほら!夏希さん手際いいし、カントクさんのカレーも美味しいし!」
「まね!美味しいのはわかるーっ!つーか夏希ちゃんエプロン姿まじヤバたん!!」
「ありがとう」
いづみさんのスパイス講座を聞き流すようにみんながそそくさと自分の役割を決めたようでこなしていく。
幸と天馬は相変わらず言い合っていて、この光景に慣れ始めている…もはや麻痺してきたかも…
「おい!米はもっとちゃんととげ!」
「当たり前のこと言ってるだけだ!それにその米の品種はなんだ?オレはピカリン米しか食べないって決めてる」
「わがまますぎ…夏希水ってこのくらい?」
「お前がガサツすぎるだけだろ!つーか、水くらい夏希に聞かなくてもわかるだろ!」
「お、落ち着いて、このお米も美味しいよ!」
「大根役者は黙ってろ!」
「ちょっと…天馬」
「大根…大根も美味しいよ…」
「おにぎりにしたらなんでもおいしいよー!」
「それは、お前が変人だからだ!」
幸が怒った表情でため息を吐いた。
そりゃそうか…仕方ないといえば仕方ないのだけれど…天馬は言い過ぎだ。
「アンタがいると空気が悪くなる」
「オレのせいかよ!?そもそもお前がちゃんと米をとがないから!」
「人のせいにしないでよ」
「なんだと!」
止めようとしたらカズくんが天馬と幸の間に入って笑顔で笑った。任せておいても大丈夫そうだ、この中ではカズくんは1番年上だしそれにお兄さんだし。
「こーらテンテン!そんなふうに可愛くないこと言ってるとトモダチいなくなっちゃうよ!」
「………っ!お前みたいに誰にでもいい顔してまで薄っぺらいオトモダチ作ろうとか思わない!」
「えっと……ハハ」
「言っていいことと悪いこともわからないの?」
空気が凍りついた…止めれたはずなのに止められなかった。どうしようも無いのは仕方の無いことだけれど…言っていいことも悪いこともきっと天馬は分かってる。頭に血が上ってしまっただけ…だと思う。
「あっ、天馬くん!」
出ていった天馬を追いかけようとすれば、幸に手を掴まれた。
「夏希ほっときなよ」
「そういうわけにはいかないよ…心配。ここら辺何も無いし…」
「そうだね、夏希ちゃん天馬くんのことお願い」
「わかりました!」