千夜一夜物語

「ただいまー…疲れた」

「あら、夏希ちゃんおかえりなさい」

「いづみさんただいまです」

「今日は学校行かなきゃ行けないって言ってたもんねー紅茶いれるね。帰りに買い物もありがとう。勉強できた?」

「なんとかできました…だけど疲れました…」

「お疲れ様、いいこいいこ」

アイスティーが目の前に置かれいづみさんは私の頭を優しくぽんぽんと撫でてくれる。本当に真澄のお嫁さんに来て頂けないだろうか…と真澄化してる自分に少し呆れた。

「あ、そういえばどうだったんですか?」

「あー、ミーティング?」

「そうです、なんか前途多難になりそうな感じでしたんで…大丈夫かなぁ?と」

「流石夏希ちゃんお見通しだね…綴くんも交えつつ初代夏組のテイストしつつって話だったんだけど夏希ちゃんはご存知の通り夏組はコメディ劇が中心だからさ」

「天馬が反対したんですか?」

「んーん、なんとか承諾はしてもらえたよ。それに、天馬くんあんな感じだけどお芝居には人一倍真面目だから」

「やっぱり…まぁでもコメディとか人を笑わせる演技ってとっても難しいですよね…支配人も夏組の劇観ないと夏が来た感じしない!って言うお客さんが後をたたないって言ってたくらいですし…本当に人気だったんですね」

そうなんだよねーってため息を吐いたいづみさんには疲れが残っているようだった。よっぽどのミーティングだったのだろうか…?

「それに…綴くんが当て書きしたいって話で主役準主役を決める時は全員が立候補して…綴くんが対応するって言ってはくれたけど…大丈夫かなぁ…と悩みが尽きないんだよね…」

「全員が…主役に立候補!?椋くんや三角さんも!?」

「そうなの…やる気があるのはいい事なんだけど…全員が前に出たがるタイプだとは思ってなくて」

「ふふ、元気があっていいですよね。綴が大丈夫なら任せてみましょうよ。ああみえてもMANKAIカンパニーのお兄ちゃんですから」

「確かにそうだね。春組とは全然違うのが凄く新鮮でワクワクはしてるの」

そう言ういづみさんと笑顔で笑った。
あれから、約1週間今日でテスト終わりやっと開放される…テスト週間の家事はおやすみさせてもらっていてその間はいづみさんが担当してくれる事になっている。そして今日は脚本の締切日だ。

「ただいま~」

「あ、みんなおかえりー!今日の晩御飯はカレーだよ!」

「いや、昨日も一昨日もカレーっすわ…」

「てか.夏希今日でテスト終わりだよね?明日から夏希が食事作るんでしょ?俺たちいつかカレーの具材にされそうなんだけど」

「うん、今日が最終日だったから明日から作れるよ」

「よし、カレー回避…」

「いやいや、今日のカレーはスパイ「長くなるからいい」

帰ればみんな同じタイミングで帰ってきたようで談話室は騒がしくなる。扉が開いて綴が苦しそうに呻き声をあげながら入ってきた。なんとか脚本が書けたらしい。

「つづるん!?」

「お、おい!!」

「きゅ、きゅ、救急車!!」

「おにぎり食べるー?」

「大丈夫、寝てるだけ。そのうちすぐ起きるからそっとしておこう」

スヤスヤと眠る綴の髪を撫でながら脚本を読むうん、とても面白い。まさかの全員主役問題も解決していて流石MANKAIカンパニーの長男である…。

「んっんん…」

「あ、おはよう。無理に起きちゃダメだよ」

「あっ、悪いっ……って…流石に膝枕は…ちょっと」

「綴顔真っ赤だね」

「うるさいっす…だいたい至さんは大人のくせして夏希に甘えすぎなんすよ」

「言うねぇ」

「ふふ、膝の取り合い?綴珈琲といつものクッキー置いておくね」

「あぁ、ありがと。脚本どうだった?」

「全員主役のアラビアンナイトは最高だよ…千夜一夜物語をモチーフにしてる感じが凄く楽しいし、コメディだけじゃなくって最後に少し愛が入ってるとこも好きかな」

「良かった…その感じだと監督は稽古場?」

「皆で読み合わせしてるよ」

「そっか、良かった」

「主役は天馬で準主役は幸かな?」

「うん、アラジンが三好さん、シンドバッドが椋、ランプの魔人が斑鳩さんだな」

とても楽しそうに言う綴にワクワクした。
談話室へと来たシトロンと咲也、真澄に夏組の台本を渡して春組で読む。この時間もとてもとても好きだ。

「姉貴、綴を膝枕したってほんと?」

「え?うん?」

「いだだだだだだっ!!!!真澄!!離せ!!」

「ムカつく」

「痛い痛い痛い!!ギブギブギブ!!!」

「真澄くん!?」

「ヘッドロックはダメネー!綴死んじゃうヨー!」

「よし、この写真でブログUPよろー」

「至さんまでっ!!」

賑やかで家族みたいな春組がいて、まるで兄弟で明るい夏組が誕生した。どんどんと進みこのMANKAIカンパニーは在りし日々を取り戻してる気がする。

「皆さん、夏組が困ってたら僕たちが手助けしましょうね」

咲也がそう言ってみんな笑った。

千夜一夜物語

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