劇団七不思議
「イエー!今日からここがオレの家ーーっと。お、ちょっぱやで500ええな!ついた!」
さっきからスマホ片手に何やってるんだろうとは思っていたけれど、やっぱりか。カズ君はインステに投稿するための写真を撮ってたらしい。どうしよう、私のフォロワーにバレたら…同棲してるとか変な勘違いされそうで怖いな。
「夏希ちゃんと、同棲記念★」
「ふざけるな。姉貴に触るな、撮影禁止」
「えーっ」
「ソウダヨ!夏希はミンナのカノジョネ!」
「凄く卑猥な関係に聞こえるんだけど…」
「幸ッ!誤解だからっ!」
「わかってるよ、冗談だよ」
真澄のお陰で今回ばかりは助かった。真澄以外はみんな自室へと戻って行ったけれど真澄は私といづみさんを守るんだーって聞かない…戻るつもりは全くなさそうである。
「寮ってこんなに広いんだね」
「まぁ…20人は住めるみたいだし?」
「……オレの家より狭い」
「スタジオにでも住み着いてんじゃない?」
「ふふ、でも実際住み着いてるよね?お仕事忙しそうだし」
「なんでだよ!たくっ……別に今はそんなに忙しくないけどな」
「はーい!みんな、部屋割りするから集まって。寮は基本的に2人部屋になってて、3部屋を分けて使ってもらう事になるんだけど」
いづみちゃんの言葉を遮って天馬はオレは一人部屋以外ありえない。と言い出しまた、幸と天馬の言い合いが始まった。なんだか、これが定着してきてしまっている…なんとかせねば…話が中々進まない…
「うーん、夏希ちゃんにもゆっきーにも振られたしむっくん同室しよー?」
「え?僕?僕で良ければ、いいよ」
「やたー!今日からルムメ!」
「よろしくね」
「じゃあ、2人は202号室を使ってくれる?」
「荷物運ぶ前に軽く掃除はしたけれど、気になる事とか、必要なものあれば言ってね。用意できるものは用意しちゃうから」
「ありがとうございます」
2人が言い合いしているうちにカズ君はちゃっかり椋君と同室になっている…結局幸は201号室天馬は203号室とそれぞれ空いている部屋に入るそうで、1人増えたら要相談という形に落ち着いた。
「203号室ですか…」
「支配人!!びっくりするじゃないですか!!急に現れないでください!!」
「すみません…それよりも、203号室はまずいですね…」
「え?まずいってどういう事ですか?」
「あ、わ、わ、私は、自室に戻ります…」
「お、おい!!なんだよ!夏希っ、お前なんか知ってるんだろう!?話せよ」
「ちょっ!天馬っ、離してっ!!私は、何も知らないっ!!」
「支配人!何か知ってるなら話してください」
「実は、MANKAIカンパニーには劇団七不思議というものがありまして…時折誰も居ないはずの203号室から謎の声が聞こえてくるという…私も怖くて近寄らないようにしていたので、掃除は一切していません」
「私も怖いので…近寄らないようにしてます…ごめんなさい…いづみさん…」
「夏希ちゃんはいいです!女の子だし、危ないです。だけど…支配人は別です!!それに別の意味で怖いです!なんでそんな重要な事早く言わないんですか!!」
二日酔いでようやく起きてきた支配人はいづみさんに怒られている。正直困った人だとは思う。やる時はやる!そんな人だが基本スイッチが入らないとこうである…
「夏希さん、大丈夫ですか?凄く後ずさってますけど…」
「椋くん、大丈夫だよ」
「夏希ちゃん大丈夫だってー!なんかあってもオレが守ってあげるよーん!」
「その軽いノリがいちばん怖いんですが」
「なに?夏希もポンコツ役者も怖いの無理なの?そんな幽霊なんているわけないでしょ?」
ビクビクと怯える私と天馬を笑う幸は悪魔にしかみえない。可愛いんだけれどね、見た目は!!
203号室から201号室へと変えろと頑なに譲らない天馬と幸…結局いづみちゃん引率の元見に行ってみるようで私は、怖いのでシトロンと晩ご飯のおにぎり作りに勤しむこととなった。
「夏希はホラー苦手ネ?」
「うーん…うん。苦手かな」
ふと気付けば春組のみんながリビングという名の談話室に集まっていた。有難い今は1人でも多くの人がいてくれた方がいいのだ。だって、そりゃ怖いでしょう。幽霊でます、なんて言われたら怖い。
「夏希そういうの好きそうじゃん」
「苦手だよ…綴は私の事ゲーマーオタクとしか思ってないでしょ」
「でも、夏希ちゃん至さんとよく対戦してるよね?」
「あれは、ゲームだし別。ゾンビはいけるけど、ジャパニーズホラーは無理。あと、スプラッタも無理だよ」
「え…ゾンビってスプラッタだったよな」
「そうじゃないやつもアルヨ」
「じゃあ、今度俺とホラゲの実況する?」
「画面叩き割ってもいいって保証してもらえるならいいよ」
「俺泣くわ」
「至のディスプレイゲーミングディスプレイだから5.6万はしたっけ…」
「ひぃっ…そんなにするんですね…」