ポンコツ役者
「テンテンすげー!」
「やっぱり本物の役者さんは違いますね!」
「当たり前だ」
「普通」
「なんだと!?」
「もう、幸も天馬くんも一々突っかかっていかないで落ち着いて」
「課題は以上!みんな、お疲れ様」
「は?これで終わり?」
天馬くんと向坂くんは困惑したような表情でそう言ったまぁ…それもそうか…普通のオーディションだったらもっといろいろ聞かれたりするもんだし課題だってあれだけじゃないだろう。
「結果は?」
「全員合格」
「はぁ!?」
「全員って…ボクも?」
「おめでとう、向坂くん」
「ま、人材不足らしいしね」
「みんな、合格おめー!連絡先交換しよ!」
「ふざけんな、こんなレベルの低い奴らと一緒にやれてってのか?」
「はぁ…自分をどこまで過大評価すんだ、このポンコツ役者が!」
「さっきから、オレのどこがポンコツっていうんだ」
「空気読めないポンコツぶりだよ!」
「んだと!?」
「け、喧嘩はダメです!」
「まぁまぁ、みんな仲良くいこーよ!」
「ねぇ、幸、皇さん…さっきから何度言わせれば気が済むのかな?大人だったら、ちゃんと1回でお願いした事聞いてくれないかな?これ以上いづみさん…監督の手を煩わせないで」
そう言うとシーンと静まり返り、幸も皇さんも分かってくれたようで安心した。あんまりにも度が過ぎている、というかうるさい。
「なんだか、真澄くんと綴くんを思い出しますね…」
「末はニコイチ、ケンカップルか。男の娘流行りだし」
「セット売りでがっぽがっぽダヨ」
「あぁ…確かに缶バッチとかセットにしたら売れそう、いいかも」
「大人のオタク会話生々しいんでやめてください…つーか、夏希まで完全に毒されてるし」
「外野うるさい!」
「黙ってろ!」
案外仲良くなれそうな2人だしなんだかんだ、息ぴったりだ。それに、二人共が言っていることは間違ってないしまぁそれで一々手が止まるのは良くないんだけれど。
「精神年齢って知ってる?」
「なんだと!?」
「はいはい、そこまで!定員割れしてるし、時間もないので全員合格ってのは確定だよ。それで不満があるなら、天馬くんには辞退してもらうしかないけど……どうする?」
「オレを外すのか?」
「このメンバーでやるのが嫌ならしょうがないよ」
「……わかったそれでいい」
うーん、嫌だ嫌だと言いつつも嫌じゃないのかな?天邪鬼?いやいや、流石に嫌だったら辞退すればいい話だ。それでもMANKAIカンパニーに入団するということは、やっぱり理由があるからなのかな…?
「あ、ねぇ天馬くん」
「ん?」
「どうして、MANKAIカンパニーに?天馬くんなら逆にスカウトされててもおかしくないよね?」
「それは…今まで本格的な舞台経験が無いから、演技の幅を広げるために劇団を探してたんだよ。暇つぶしにそいつらの公演見に来たらちょっとはマシだなって思っただけだ。ま、ラスト以外グダグダで何度も席立とうと思ったけどな」
雄三さん二号だ…なるほど。妙に納得つまり咲也に惹かれてこのMANKAIカンパニーに入団するって決めてくれたのかな。
「そうだったんだね。よし、これから夏組メンバーとしてみんな、頑張っていこうね!」
「はーい」
「ういー」
「よろしくお願いします!」
「はぁ、しょうがねぇな……つーか、俺もひとつ聞いていいか?」
「ん?夏希ちゃんが、どうかした?」
「え…私?」
「あぁ、そうだ。お前は助監督か?」
「あぁ…違うよ。私はMANKAIカンパニーのスタッフだよ」
「ふぅん…わかった。アンタは特別で天馬でいいぞ俺より年上なんだろ?」
「アンタじゃなくて、夏希ね。そこにいる碓氷真澄の姉。よろしくね天馬」
「お、おう…」
「へぇ…いろんな女優に慣れてるハズのポンコツ役者でも夏希には照れるんだ」
「うるさい!!」
「まぁ、確かに…夏希美人だもんなぁ…」
「監督と姉貴に手を出したら殺すから」
「夏希ちゃんは学校でもモテモテですもんね!真澄くんの気持ちはちょっと分かるかも…夏希ちゃん心配」
「え、嘘でしょ。咲也にまで心配されてるの?私」
「そりゃ、夏希は危機管理能力ゼロだからじゃない?日頃の行いが悪い」
「至まで酷い…」
「監督が毎日心配してるしなぁ…」
「綴まで…」
「この前も商店街でナンバンヅケされてたネ!」
「ナンパかな?」
「ええ…シトロン…南蛮漬けは酷いよ…」
「良かったじゃん、ポンコツ役者。敵がたくさんいて」
「違ぇよ!!」