夏組オーディション
今日は夏組オーディションの日。春組のみんなで劇場に集まりオーディションの準備を着々と進めていく…団員募集はしたけれど本当に5人集まるか不安でソワソワしてしまって落ち着かない。
「オーディション、人来てくれますかね?」
「咲也、前回のオーディションはどうだったの?」
「あー…オレ1人だけだったよ」
「マンツーマンでしたね!」
「何も聞かれず即採用!って言われました」
「支配人…もうちょっとしっかりしてください」
「今は、監督も、夏希ちゃんもいる事ですし大丈夫ですよ!」
「本当に大丈夫なのか…人来る?」
「うーん…絶対くる!とは言えないけど、天鵞絨町でMANKAIカンパニーは、わりと古参なの。それに寮住まいの食事付きだから好条件な筈だから…」
「やっぱり、寮は少ないんだな」
「まぁ、うん。多くはないかな」
話を聞けば、咲也と支配人のみのマンツーマンだったそうで。何も聞かれず即採用とか…支配人のテキトーさに悪寒がした。本当に支配人がこの劇場の支配人になってよく潰れなかったな…あ、いやいや、潰れかけてるんだったわ。危ない危ない…
「こんちはー」
「どーも」
声が聞こえドアの方へと目をやれば、ニコニコと笑顔のカズくんとそんなカズくんに嫌々全開の幸が入ってきた。スカウト枠はやっぱりこの2人だったか…
「あ、いらっしゃい!2人とも来てくれたんだね!」
「カズくん、幸いらっしゃい!」
「もしかして、スカウト枠って2人の事っすか?」
「そうだよ!2人とも見込みがありそうでしょ?」
「まだ、やるとは決めないから。一応今日話を聞いてから決めるつもり」
「オレはオッケーすよ。面白そーだし、つづるんよろー」
「そんなんでいいんすか!?」
「いいのいいの、どーせ暇だし!友達増えそうだし!」
カズくん軽い…まぁだけどいづみさん曰く最初のきっかけはなんでもいい、興味持ってもらうことがとても大事だって言ったし。
「幸はやらないの?」
「うーん、でも、役者に興味があるかっていうとそうでもないんだよね」
「そうなんだ。残念、幸が作った衣装は幸が1番似合うと思ったんだけど」
「そうだよねぇ…幸くんなら舞台映えすると思うし」
「あー、確かにそこは気になるんだよね作っている時も実際舞台に立って動いたらどうなるかって、想像しにくいところもあるし」
衣装係件役者でいいんじゃないの、綴のその一言で決心できたのか幸が夏組メンバーとして加入する事を前向きに考えてくれそうでよかった。幸が加入してくれれば凄く可愛い看板役者ができる、ちょっと楽しみだ。春組には女形居ないし。
「ゆっきーって言うんだ!かわいーね!オレ、三好一成。連絡先交換しよー!」
「ちなみに、オレ男だから」
「そうなんだ!かわうぃーね!」
「……このコミュ力高男と同じ組?」
「うん。カズくん悪い人じゃないよむしろ優しいし、フライヤーとかのデザインしてるのもカズくんだよ?」
なんだかんだカズくんと幸はいいコンビになりそうで楽しそう。
「す、すみません」
「ん?」
「あ、あのー」
「あ!向坂椋君っ!」
「あ、あの時の美人さん…」
「なに、知り合い?」
「うん。ロミジュリの千秋楽に来てくれてたの。少し話して、興味あるなら是非オーディションにって誘ったの」
「向坂、オーディション受けるの?」
「え?あ…瑠璃川君?」
どうやら2人は同じ中学校らしく顔見知り程度らしいそれならとてもいい関係を築いていけそうだし良かった。
「それじゃあ、ひとまずオーディション始めようか!幸くんも一成くんも一緒にオーディション参加してくれる?」
「りょ」
「わかった」
「よろしくお願いします」
椋くんは緊張しているよで表情が強ばっている。もっとリラックスして欲しいけれど、私が声をかければかえって緊張させてしまうかもしれない。それに、オーディションだ手を貸してしまう事によって良くない事も起こるかもしれない。ここは公平にいづみさんのジャッジに任せよう。まぁ、たぶん人数的に合格だとは思うけれど…
「あ、おい、オーディション会場ってここか?」
「え、あぁ、はい。そうですよ」
皆を舞台まで案内して1度ボールペンと手帳を取りにエントランスへと戻るともう1人のオーディション参加者だろうか?私の肩に手を置いて聞いてきたのは、サングラスをかけててもわかる…有名人オーラ…
皇天馬…子役からずっと活躍している俳優がなんでMANKAIカンパニーの夏組オーディションに?
もしかして、熱愛系スキャダルでクビになったとか?いやいや、でも確か家族で芸能事務所を経営してたような気がするけど?