暴力、ダメ絶対
昨日の夜に何かあったのだろうか?至と出掛けてその後綴に会っただけだったのでわからなかったが何かいつもと違う。
「あ、真澄くん」
「…………」
「真澄?」
真澄の様子が変だ。完全におかしい、どうしたのだろうが、いつもならいづみさんにべったりなはずなのに今日はいづみさんを朝からずっと避けているし返事もしない…おかしい。絶対おかしい!
「待って、真澄くん!」
「あれ、真澄くん、朝練は!?」
「学校行く」
え?あの、いづみさんを無視して真澄は朝食も食べず寮を飛び出していってしまった。なにがあったんだろうか?嫌な予感しかしない。
「どうしたんだ、あいつ…」
「マスミがカントク無視するなんて明日は豆が降るネ!」
「雨です!」
「オレ、心配なんで一緒に学校ついていきます!」
「うん。お願い」
ため息を吐いたいづみさんにコーヒーを手渡せば困っ
いるようだった。なにが、あったかは知らないけどどうやら緊急事態だ…また真澄がいろいろと問題を起こした。
「何か、あったんですか?」
「昨日、真澄君に最近どう?って聞かれてね私のためにやってるって言われたから…それじゃダメだよって言っちゃって」
「あのバカ…たぶん、いづみさんの事が好きすぎて周りが見えてないんだと思います。真澄から話してきたら話して貰えませんか?」
「もちろんだよ!」
「ありがとうございます」
夕方、真澄が帰ってきたところを狙っていづみさんは真澄に話しかけるが完全に無視して、いづみさんから逃げる…本当に子供なんだから。
「拗ねたガキかまったく…」
「同意見です」
「あ、そうだ!いづみさん!夕飯の卵が足りないんですよ!卵買ってきてもらえますか!?」
「え?でも、卵なら冷蔵「今すぐお願いします!」
「ほら!真澄も荷物も持ちしてこい!カントクだけじゃ心配だろ?」
「ありがと、夏希ちゃん!綴君!」
そう言って2人で出ていった。うまく行くといいけれど、どうだろうか、心配だ。
「かなり、強引にしたけど上手くか…?」
「いけば…いいんですけど…」
しばらくして帰ってきたはいいが、状況は最悪でどう考えても悪化していた。いづみさんを見れば頬が赤くなっていた…もしかして真澄いづみさんに手を挙げた?いや、まさかそんな事考えたくもないけれど…わからない。
「行く前より、ひどくなってんな」
「あれ、監督さん、ほっぺたちょっと赤くなってない?」
「いい加減何があったか話せ」
「私いづみさんの手当てしてくるから、いづみさん行きましょ?」
「う、うん」
保冷剤と飲みものを持って談話室から出ていづみさんの部屋へと向かう。はぁ…真澄のあの感じからいくといづみさんを叩いたのだろう。何か理由がなければ手を上げないとは思うが、女性に暴力なんてもってのほかだ。
「夏希ちゃん、ありがと。でもね、事故なの。真澄君を怒らないであげて」
「事故ですか?」
「そうなの、真澄君は私のために怒ってくれて…カッとなったのは悪いことだと思うんだけど」
「本当にごめんなさい」
「夏希ちゃんが、悪いわけじゃないよ!謝らないで!そもそも、前に出ていった私が悪いんだし!」
コンコンとノックが聞こえて、真澄がおずおずと入ってきた。どうやらみんなのおかげでいづみちゃんと話す決心がついたようだった。
「真澄君、話してくれる気になった?」
2人で話してもらおうと思い私は黙って部屋を出れば咲也がホッとしたような表情で私を見た。
「ちゃんと、話してるよ。ありがと、咲也」
「んーん、みんなのおかげだよ」
「真澄君が勘違いしちゃったみたい。叩いたことも凄く反省してたよ」
「それは、反省させないとね」
咲也に任せて談話室に戻れば3人は私の顔を見て少しホッとしたようだった。
「真澄にはちゃんと言い聞かせます、暴力はダメ絶対って」
「まぁ、これからもこういうことはあるかもしれないしね」
「てか、何気に夏希が1番血の気が多かったりするんだよなぁ…」
「この前も勝手に1人で虚ろしてたネ!」
「うろついてた?ですかね?だって勉強してたら甘いもの食べたくなるじゃないですか」
「危機感皆無か」
「綴さんはいつからオカンになったんですか」
「妹を守るのも兄の勤めだね、頑張れ綴兄」
「それを言うなら父親としてちゃんと教育してください」
「ママ、パパとお兄ちゃんが怖い…」
「夏希一緒に3連単狙うネ!」
無理矢理、いづみさんを襲おうとした真澄を思いっきり笑顔で蹴って綴さんに怒られた…解せぬ。暴力ダメ絶対と言う言葉は自分に帰ってきて気をつけようと思いました。