血は争えない
今日の晩御飯は、真澄の好きな生春巻きと咲也の好きなナポリタンにしたのに食があまり進んでないような気がした。これは、きっと何かあったな。今日はフライヤー配りに参加出来なかった…何かあったとすれば、フライヤーを配った時だろう。朝には普通だったのに帰ってきたら辛そうな表情でボーッとしている。
「みなさん、今日は食欲ないんですか?おかわりもありますよー?」
「あ、いえ!俺おかわりいただきます!」
「んー、じゃあ俺ももらおうかな」
「アンタ、痩せろって言われてた」
「夏希の作る生春巻き美味しいから」
「姉貴のが美味いのは当たり前、他と一緒にすんな」
いつもなら、いづみちゃんを見ているはずだが、今日は、ぼーっと椅子に座ったままだ。いづみさんとなにかあったのだろうか?真澄の隣に座ってみんなに聞こえないように真澄に聞く。
「真澄、なにかあったの?」
「………別に」
「何かあったんでしょう?話して」
「………知らない奴らにバカにされた…監督の事…演技が下手だって」
話を聞けば、フライヤーを配ってる最中に二人組に会ったそうでいづみさんの事をバカにしてくれたらしい。つまり、私達もバカにされているという事だ、たしかにいづみさんは演技力はないかもしれない、それでも私たちの大事な監督であり、主宰なのだ。
バカにされたら腹立つし許せない。
「そう、どんな人?今度あったら殺す」
「ちょっ夏希落ち着けって、真澄がビビってるから!アンタらホント姉弟だな…血は争えない」
ニコリと微笑んで聞けば、真澄は縮こまって答えてくれないそんな真澄をみかねて綴さんは私を止める。
「確か、GOD?なんとかだったかな…」
「でもGOD座かぁ…丞さんがそんな事するタイプには見えなかったなぁ」
「夏希ちゃんは知ってるの?」
「うん、GOD座は何度か見に行ったよ。だけどGOD座トップの丞さんは凄く優しい人だったけど…」
「ボロクソに言われた。姉貴男見る目ない」
笑顔で真澄の首を締めあげる。死にそうになっている真澄は日頃の行いか誰からも助けて貰えない。ざまあみろ弟よ。
「まぁ、ムカつくけど相手にしてる暇俺達には無いだろ?だから、汚名返上しないと。ほんと、ムカつくけど」
咲也と真澄のACTのおかげで、フライヤーもかなりはけたといづみさんが嬉しそうに話す。それに、至とシトロンのおかげでPV数もかなり上がってきてる。ブログにもコメントがきたりしていていい調子だ。
「夏希ちゃん、チケットはどう?」
「あ、これが現在の枚数と売上表です」
「おお…流石。我がMANKAIカンパニーの経理担当だ…」
「以前より席は埋まりました。だけど、完売まではまだまだです」
「この調子だと半分くらいしか埋まらないかも…どうしましょう…そうなったらこの劇団は…」
「はい、支配人!弱気にならない!まだ、3週間はありますから何か考えましょう!」
「そうですよ!夏希ちゃんの言う通りですよ!」
そうは言ったものの…どうやってこのチケットを売ろう…そう悩んでいるといづみさんも悩んでいたようで二人で顔を見合わせて苦笑いした。
「あ、私のインステでも拡散します」
「夏希のインステフォロワー5万人いる…至さんと夏希といい…凄いな…」
「ほんとだ…可愛いね!…ってこれ!俺達が食べてる晩御飯や朝食…あ!これ前に作ってくれたクマさんのキャラ弁だ!」
「うん、料理が好きで料理用のアカウント作ったんだそしたら凄くフォロワーさん増えた」
「写真の撮り方も上手だね…可愛いし美味しそうって、いやいやいつも毎日美味しいんだけどね!?本当に女の子だ…見習わないと」
「いづみさんもカレーも美味しいです。あ、今度いづみさんの手作りカレーアップしてもいいですか?」
「もちろんだよ!腕によりをかけて作るね!」
「アンタ達の作るメシは上手いから好き」
真澄は私の料理もいづみさんの、料理も大好きだとおいしいと言って凄く褒めてくれるから嬉しい。
「夏希この、キャラ弁作れる?」
「えーと、うん。作れますよ」
「マジか、テンション上がるから作って」
「でも、大丈夫なの?仕事では隠してるんでしょう?」
「大丈夫基本俺、ぼっち飯だから」
「さすがイタル、ジャパニーズ干物ネ!」
ジャパニーズ干物…たしかにぼっち飯だから…か。至らしいな…明日は頑張ってみんなにキャラ弁を作ってみよう。
「じゃあ、明日はみんなにキャラ弁作ってみるよ」
「oh!ワタシはドラネコがイイネ!」
「シトロンはドラネコね、綴は?」
「オレは…キャラ弁はちょっと…いや、作ってもらっておいてアレなんだけどな」
「キャラ弁じゃ無くても、リクエストあれば作れるよ?」
「じゃあ…お言葉に甘えて…のり弁」
「うん、分かった」
「あ、シトロンさん、明日時間あったら一緒にキャラ弁作りませんか?劇団員ブログにアップしましょう?」
「イイネ!一緒にお料理するヨー!」