スーパーパリピデザイナー

「ねぇ、万里何で怒ってんの?」

「別に、怒ってねぇよ」

「怒ってるじゃん、私が最近万里と遊ばないから?」

「うるせぇな、怒ってねぇよ」

機嫌の悪い万里と屋上で過ごす。めんどくさくて嫌いな教師の授業をサボる。もしかしたら単位を落とすかもしれないが、落としたところで卒業は確定なのでどうでもいい。

「ごめんね、だけどわかって欲しいの。今ね凄くやりがい感じてて楽しいの万里はさ、何か気になるものとかないの?」

「ねぇな」

「そっか…」

どんどんやさぐれていく万里になんと声をかければいいか躊躇ってしまう。万里は私の事なんかお構い無しに喧嘩はふっかける、女遊びはするそんな話が毎度のように耳に入ってくるのだ。家族でも、彼女ではないのでそこまで強くやめろとも言えないのだ。

「はぁ…どうしよう」

「夏希ちゃん、どうしたの?」

「咲也ッ…なんでここに?」

「夏希ちゃんいるかなぁっていつも摂津くんといるでしょ?今日は1人だったから声掛けちゃったんだ」

「あー…なるほど。咲也は友達が悪い事とかしたらどうする?止める?」

「オレ?オレは全力で止めるかな…大事な人に傷ついて欲しくない」

「そうだよね…ありがと」

「オレで良ければいつでも相談乗るからね」

万里の事が頭を支配する。毎日のように喧嘩している、女遊びしてる、とか様々だ。少し前はそんなことなかったはずなのにまた増えだした。

「あ、みんなお疲れ様」

「おつおつ」

公演まで残り5週間…みんなとてもいい感じで稽古は進んでいるようで毎日いづみさんから聞く感じではとても上手くいっているようだ。今日も稽古を見学させてもらっており麦茶を皆に配る。

「そういえば、支配人!チケット販売っていつから始めるんですか?」

「そうそう、もう始めないとなのでサイトで告知をしましたよ!劇団の公式サイトを見てください!」

「公式サイトなんてあったんですね」

「PC持ってきますね」

「ありがとう」

「へー、どんな感じなんだろ、楽しみ」

「あんまり…期待しない方が…」

咲也の歯切れの悪さが引っかかる。PCを机の上に置いて確認すれば酷かった…いや、何十年前のやつ?こんなの見る人いるの?いや、いやない。私だったら即ブラウザ閉じてる。

「これ…?」

「この、字と画像がくっ付いた並びとか無意味に点滅する色文字とか、20年前に作ったサイトぽいね」

「しょぼい」

「これは…しょぼいね」

「ほら!流行りは繰り返すって言いますし!こういうシンプルもまた流行るかも!」

「流行りませんよ、支配人。フライヤーも見ましたがかなり酷かったです」

「最近夏希ちゃんが凄く辛辣で辛いです…」

「誰かこういうサイトとかフライヤー作れる人いる?」

誰も作れないようだったが、唯一綴の知り合いさんに連絡をとってみることになり、解散となった。いやにしても…これはひどい。

「このサイト…そんなにダメですかね?」

「ダメじゃないですけど。確実にお客さんは見ませんよ?」

「ワタシの国では即削除ネ!」

「ダセーぞ」

「うるさい!このレトロ感はオウムにはわからないんですよ!」

後日立ち稽古に付き合って欲しいと、いづみさんに言われたので現在立ち稽古を見学中である。思ったことや、感じたことを教え欲しいらしく、私でいいのかな?と思う…綴が少し嫌そうな顔しながらスマホをいじっている。

「監督、デザインの先輩に連絡したらこれから来るらしいっす」

「これから!?随分急だね」

「劇団のこと話したら興味持ったらしくて」

劇団に興味があるかもしれない、そう思っているいづみさんは少し嬉しそうだ。

「こんちはー!すげー!何これ、マジ、舞台とか初めて立った!広えー!テンアゲすぎ!」

「あー、デザインできるっていう先輩っす。三好一成さん。三好さん、どもっす」

「おー!つづるん!久しぶり!すげーな!ほんとに劇団やってたんだ」

「つづるん…」

「そこは、スルーで」

「うざい」

「真澄、わかるけどそこは黙って」

「外国人とかいるじゃん!やべーなこの劇団!」

「キャラが負けちゃうヨ、ワタシも何か新しいことしないとダヨ」

「いいから黙ってて」

なんだか、情報量が多すぎてツッコミが追いつかないようだ…にしてもつづるんちょっと好きかも…今度どさくさに紛れて呼んだら怒られるだろうか?

「夏希の考えてる事はなくとなくわかるけど、たぶん怒られないんじゃない?今度やって見たら?」

「いいかなぁ楽しそう」

「オレも面白そうだから呼んでみよう」

至と笑った。よくわからないけど、三好一成さんはなんだかんだ悪い人じゃ無さそうだがノリが軽い…万里みたいなチャラい人!って感じじゃなくてノリの軽いチャラい人なのかな?

「ねぇねぇ!君チョー可愛いね!もしかして、ここの劇団員とか?めっちゃ可愛い!」

「いえ、私はスタッフです」

「スタッフ!?チョー勿体ないじゃん!モデルとか芸能人かと思っちゃった!おれ、一成!カズくんって呼んで!マジでこんな可愛い子と話せるオレチョーラッキー!てかマジでテンアゲだわ!」

「あ、あ、ありがとうございます…」

「とりまLIME交換しよ?」

「あ、はい」

「姉貴に触んな、LIMEも無理だから」

「えー!?もしかして弟!?チョーそっくりじゃん!ヤバたん!」

結局仕事上連絡が出来ないと困るのでLIMEの交換をして、真澄がヒートアップする前に綴がカズくんに一喝して帰って行った…嵐だ。めっちゃくちゃノリが軽い…だけど、強引じゃない所が好感がある。偏見でカズくんには失礼だけれどああいう人は凄く強引なイメージがあるから。

「はぁ…疲れる」

「あんな風に追い返して大丈夫?」

「基本的にいい人なんで大丈夫っす」

「キャラが濃い人だったね」

「まじうざい」

「珍しく、お前と同意見だわ」

そう言って綴さんの顔は疲労が滲み出ていた。
だけど、これで衣装、大道具、フライヤー、公式サイトは、なんとかなりそうだ。あとは、舞台を仕上げるだけ。

みんなも気合が入っているのか、再び稽古が始まった。

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