危機感を持ちましょう!
「うーーん…どうしようかなぁ…」
現在冷蔵庫を眺めながら睨めっこしている。雨のせいで買い物に行けず直帰したため食材も限られている。だけど、やっぱり栄養のあるものを作って食べてもらいたい。
いや、買い物に行かない私が悪いのだけれどこんな大雨の中どうやって買い物に行くんだろうか、世の中のお母さんは凄いよね…春ってどうしてこう嵐が多いんだろうか…綺麗に咲いていた桜も殆ど今日の雨で落ちてしまうだろう。
「支配人、缶詰とかパスタってどこにありました?た」
「あぁ、上の棚ですよ!では、私は監督と倉庫の備品を片付けてきますね」
「はーい」
今日はパスタにしようかな…トマト缶あればいいなぁ…たまにはパスタもいいと思う…最近和食ばっかりだったしなんなら、お子様プレートみたいなものを作るのも楽しそうだ。
「えーと、パスタと、缶詰…コーンないかな」
「ただいま」
玄関の方から声が聞こえて談話室に綴が入ってきた。今日は早い帰りみたいだ、一応みんなの分バスタオルは玄関に置いておいたけど綴は濡れてないようで安心した。
「あっ、綴っおかえり!」
「夏希何やってるんだ?危ないぞ」
「大丈夫、大丈夫ちょっとパスタ取りたくって」
「高いところのはとる、か、ら…」
心配してキッチンまで様子を見に来てくれた綴を見れば黙ったまんま顔が赤い。どうやら、私の下着が見えているようでこっちまで恥ずかしくなってくる。
今日、何色のパンツ履いてたっけ?見られてもいいやつだっけ?万里なんて言ってたっけ?黒が好まれるって言ってた?だいぶん前に話した下着の話が頭をぐるぐると駆け巡る。
「あっ、」
「危ないっ!!」
慌ててしまったせいか、バランスを崩して綴に抱きとめてもらわなければ危うく地面とこんにちはしてたであろう。
「ご、ごめん!綴っ、大丈夫!?」
「オレは、全然大丈夫」
「よかった、怪我もない?」
「ないよ。だけど、危機感無さすぎ。ここは監督以外全員が男なんだからもう少し危機感持った方がいい事は分かってるよな?それと危ないから今度から高いものをとる時は誰かに頼むこと」
「ごめんなさい…」
「謝るんじゃなくて、ありがとうだろ?本当に怪我がなくて良かった」
ニコリと笑った綴に少しドキッとして顔が赤くなったような気がして視線を逸らした。ありがとうと言えばおう!と笑って頭を優しく撫でる。
「オイ!ツヅル!!オレの夏希に手を出すんジャナイ!」
「アンタオウムだろ!」
「………アンタ、許さない!」
最悪だ亀吉が部屋に入ってきたかと思えば、咲也と真澄が帰ってきたようで未だお姫様抱っこされている私を見て鬼の形相だ…怖い。怒りながら私達目掛けて走ってくる。
「ちょっ、真澄くん!落ち着いて!」
「うわっ!ちょっ!真澄!!やめて!」
「おいおい!真澄!!落ち着けって事故だったんだよ!夏希はそこの椅子から落ちようとしたからキャッチしただけ!」
「姉貴は渡さない!!」
「真澄っ!!いい加減下ろして!!」
「ああっ!!真澄くん!!夏希ちゃん下ろしてあげないと!!ああっ!」
真澄に米俵の様に担ぎ上げられ私は必死で暴れるが真澄に力で敵わない…残念なことに私の下着は丸見えだろう…今日に限ってレギンス履いてないの!!てか、何色のパンツだったけ!本当にやめて!!
「タダイマネー!oh!!可愛い水色ね!!」
「ホントだ、水色だ」
今日は水色か…じゃないわ!!最悪なタイミングでシトロンと至まで帰ってきた。最悪もう死にたい!お嫁に行けない!!
「案外、夏希ってウブなんだ」
「姉貴をそこら辺のビッチと一緒にすんな」
「ビッチ…」
「咲也の前で変なこと言うなよ!つーか、真澄は下ろしてやれよ!みえてるんだよ!!」
「見えてる…?」
「真澄、夏希のパンツ丸見えネ!」
「殺す!!」
「殺すはこっちのセリフ!真澄!!早くおろして!!」
「あわわっ!!ごめんなさい!!」
綴が焦って止めようとするせいで、真澄は私を下ろさない。至は私を笑顔で見つめていて助ける気はないようだし、シトロンは咲也の目を隠している…それはありがとうだけど自分の目も隠そうよ!!咲也の顔は真っ赤で大変だ。
「いい加減にしてーーっ!!」
「何が…あったの?」
正座している5人の顔には真っ赤な手形が付いているそりゃそうだ、女子高生のパンツを見たのだ殴られても仕方ない。真澄が全ての元凶だったけれど勢い余って全員を思いっきり殴ってしまった。
「カントク!夏希のパンツは水色ラシイゾ!」
「はい!?」
「カントク、今日の晩御飯は唐揚げとかどうですか?捌いたことないんですが、上手く出来ると思うんです」
「夏希ちゃん!目が怖いっ!!」
後から謝られ次の日お菓子を沢山貰ったのは言うまでもなかった。