真実

「今のところ裏方に問題はないです」

「んじゃ、今日のミーティングはこんな感じで」

「一ついいか」

「っす、どーぞ」

「昨日のミスはすまなかった。今後は気をつける。それから、今までは役者として若い奴らに道を譲るために1歩引いてた部分がある。でも監督に発破をかけられてな。これからは、舞台の上でお前らを食う勢いでやる。お前らに言うことは一つだけだ、俺に食われるな。以上」

「…後半、昨日ミスったおっさんが言う言葉かよ」

「おい、万里」

「まぁ、それもそうだな。だから、おっさんも舞台では必死にならねぇとって話だ。覚悟しとけよ」

そう言って左京さんは少し笑った。昨日いづみさんと話しているのを見かけたしそういう事だろう。きっと左京さん、いづみさんの事好きだしなぁ~まぁ、本人のいづみさんはちっとも気付いていないだろうけど。

「ランスキーとは上手くやってるみたいだな」

「おかげさまで、ボスの目論見通りですよ」

「そりゃ結構だが、あまり信用しすぎるなよ」

「どういう意味ですか?」

「そのままの意味だ」

今日の左京さんは宣言通り気迫が違う…万里がのまれて、同じく十座も左京にのまれていく…もともとの凄味に貪欲さが増して今まで以上にギャングのボスって役の説得力が出てくる。まぁ…確かにヤクザだってのもあるかもしれないけど…全然違う。

「…くそっ」

「だから言っただろうが」

「ぜってー負けねぇ」

「次はやり返す!」

「やってみろ」

どこか左京さんは清々しそうで楽しそうだ。本当に舞台が好きなんだなぁと思うと同時に嬉しくなる。MANKAIカンパニーに左京さんを誘ってよかった。

「太一?」

「…ごめ、俺っち、トイレ行ってくる」

どんどん調子を上げてる他のメンバーと違って、太一だけ調子が悪そうなのが目立つ…気になるし…何か困っていることやしんどい事があるなら相談して欲しい。

「太一…見てきます」

「ほっとけって言っただろ?今、お前にできることは何も無い」

「……それでも、私は太一が心配です…太一は家族だから」

「…そうだな。左京さん俺も夏希 について行きますよ、それなら安心でしょう?」

「…はぁ…わかった」

左京さんからお許しが出たところで臣と寮へと戻り着替えて臣と一緒に太一を探せば中庭に1人で立っていて電話している様子だった…声をかけようとすると臣は私を背後から抱きしめて静かにするようにと口を抑えられる…いや、あの、流石に恥ずかしいのですが…とも言える状況じゃなく黙って太一を見つめる。

「すみませんっ……小道具や衣装の管理が厳しくなったので他の部分で妨害を続けてるんですが……」

そう聞こえて頭の中が真っ白になった…もしかして今までのは全部太一が…?

「太一…」

「……っ!!」

「……大丈夫か?」

「……太一っ」

「臣クン…夏希 チャン……どうしようっ…どうしようっ…オレ」

そう言って泣き崩れた太一は臣にしがみつきながら泣きじゃくる…そんな2人をただ立ち尽くして見守る。

「…落ち着け」

「俺なんだ…全部。脅迫状書いたのも、衣装切り裂いたのも、小道具隠したのも…」

「そうか…」

「臣クン、俺…舞台降りなきゃいけないよね…こんなことして、続けられるわけないよね?でもさ、ほんとはこんな事したくなくてーっ」

「落ち着けって…一緒にみんなに話に行こう。俺は、太一が何か抱えてる事を知ってた。それでも、何もしてやれなかった。俺にも責任がある」

「みんな、許してくれないよ。あんなことして、許されるわけない…でも、俺、みんなと一緒にやりたいんだっ!みんなと最後まで舞台に立ちたいっ!」

「大丈夫だ。大丈夫だから…」

「太一…私は、許す。太一がちゃんと話してくれた事が嬉しい…それに太一にも事情があったんでしょう?してしまった事は変わりないけど…反省はできる。みんなにきちんと話に行こう…」

「夏希 チャン…」

「本当に、安心したの。太一で良かったって…皆がけがしたりしたらどうしようって…だから、太一が皆を傷付けるわけないって…思って…その」

「ほらほら、夏希もちょっと落ち着け」

私も太一も泣き止むのを優しく笑って待ってくれる臣に救われる。太一と少し微笑んで一緒に立ち上がる。

「ねぇ、太一。みんなならきっとわかってくれる」

「………でもっ…」

「家族だから。MANKAIカンパニーは家族だから」

「うん…わかった…」

真実

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