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なんと、チョウジアジトに一緒に同行する事になっていたのは、いつも私を呼びに来ているアポロ班の無口のしたっぱさんだった。
簡単に荷物をそろえて部屋を出ると、当然のようにそこに立っていたのだから驚いてしまった。



「……」
「……」

しかし、リゼの周りには、よく喋る人が殆どなので(ランス君も、何だかんだ言ってよく喋ってくれるし)、彼のような無口な人とはどう接すれば良いのか検討も付かない。
だからといって、チョウジまでの道中、終始無言というのも落ち着かない。

「あの、」

ついに、意を決したリゼは、横を歩く無口なしたっぱに話しかけた。彼の、鋭い目が少しだけ動いて彼女の姿を捉える。

「なんだ」
「ええっとー……」

いざ話しかけてものの、話す話題など考えていなかったリゼは、そこまで考えていない浅はかな自分を恨みつつ、必死に話題を探した。(そ、そうだ)

「な、名前! ……教えてくれませんか」
「……。」

口をへの字に硬く閉ざしていた無口な人の口が、少しだけ。
少しだけ、緩んだ。

「人に名を聞くときは、自分から名乗るのが筋ってモンじゃないのか?」
「えっ、あ、す、すみません!」

初めて聞いた、文章らしい言葉に驚きつつも、リゼは自分に付けられた、名前を口にした。(でも絶対この人、私の名前知ってるはずなのにな)

「私はリゼです。あなたは?」
「…俺はルター。」
「るたーさん。」

無口なしたっぱさんの名はルターと言うらしい。彼の発した言葉を復唱すると、男は大きく頷いた。

「えーと、じゃあ、いつからロケット団に入られたのですか?」
「……」
「あっ、ごめんなさい。自分から、でしたね。私は5年前くらいに入団したんです。」

無言で、視線だけで訴えてくる彼はやはり無口だった。けれど、今度は少しだけ云いたい事が分かったのは、無表情に見えるその顔に少量の呆れという感情が混ざったと感じたからだ。

「5年前?……3年前にロケット団は1度壊滅した筈だが」
「あっ一応言っておきますけど、私は15歳です!」
「はぁ、」
「私もアポロ様も、……あの時の生き残りみたいなものです。」

(もう、入団してから5年も経ったのか・・・)

空を仰ぐように見上げるリゼを、男は横目でチラリと見つめた。
こんなに小さな子供が、まさか5年もロケット団に所在していたとは。
通りで、上司であるアポロが彼女を贔屓目にしている訳だ。

「で、ルターさんは?」
「俺は、未だ1年にも満たないな。」
「へぇ……あ、そうだ、ルターさんって――・



蓋を開ければ
(あれ…)



無口だと思っていたのだけれど、話してみれば意外とそうでも無いかもしれない。固く結ばれていた口が開いているのを見て、リゼはぼんやりと思った。

「あ、チョウジタウンですね!見えてきました。」
「そのようだな。」

見慣れた民家が見えてきた。アジトはもうすぐだ。



10/09/03
15/03/16 修正

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