「ま、まだ…、帰りたくない…」
時刻は20時過ぎ。「送っていきます」と言った弘輝ともう少し一緒にいたくて、あたしはそうわがままを言った。
社会人の弘輝と、学生のあたし。弘輝は大人で落ち着いていて、そんなところが素敵なのだけど、デートの後はいつも早い時間に送り帰してくれるのが寂しくて、今日は口に出してしまった。
「でも、今日はもう20時ですよ」
「で、でも、まだ一緒にいたいんだもん…」
弘輝のシャツの裾を掴む。あたしばっかり弘輝のことを好きみたいで悔しい。そう思いながら唇を噛むと、弘輝があたしの頭を撫でた。
「では、うちに来ますか」
「え…っ、いいの…?」
驚いて弘輝の顔を見る。まさかそんな言葉が返ってくるとは思わなかった。
「はい。今夜は多分、帰せなくなりますけど、それでもいいのなら」
そう微笑んだ弘輝に、あたしの頬はカァっと熱くなった。
◇
「んん…っ、ふ…っ」
落ち着いたモノトーンの家具で固められた弘輝の部屋。シャワーを浴びた後、ベッドで抱き締められると、優しいキスがたくさん落ちてきた。
唇を重ねながら頬を大きな両手で包まれて、静かに身体をベッドに沈められる。弘輝のシャンプーの匂い。肌が触れた場所から伝わる温かい体温。嬉しい。
「わ、わがまま言って、ごめんなさい…」
キスの狭間でそう謝る。あたしがあんな風にわがままを言ったから、弘輝は部屋に呼んでくれたのだろう。
「わがまま…? なんのことですか」
不思議そうな顔をして、弘輝があたしを見る。
「さ、さっき、帰りたくないって…、言ったこと…」
そう答えたあたしに、弘輝がふわっと笑った。
「あんなの、僕にとっては "わがまま" ではないですよ」
そう言いながら弘輝があたしの髪を撫でる。その手付きは、大切な物に触れるみたいに優しい。
「多分、蜜柑が想像するよりずっと、僕は蜜柑に惚れているんです」
「う、嘘だもん、そんなの…」
「こんなことで嘘ついてどうするんですか」
可笑しそうに弘輝が微笑む。大切にされているのはわかるけど、弘輝はいつも大人で余裕があって、あたしが想像するより好きでいてくれているなんてことはないと思う。
「その顔は、信じていませんね」
「だって…」
「じゃあ、今夜はたっぷり教えてあげないとですね」
そう言った弘輝は、再び優しく、あたしと唇を重ねた。
◇
「あ…っ、ん…っ、弘輝…っ」
トロトロに溶かされた身体の深い所で弘輝と繋がる。たっぷりの前戯で潤ったソコは簡単に弘輝を受け入れて、今なら何をされても気持ちいいと思うのに、弘輝はあたしを気遣うように少しずつ腰を動かし始める。
「痛くないですか、蜜柑…」
「う…ん…、ひぁ…ッ、ふ…っ、んん…ッ!」
繋がったソコを丁寧に責められながら、キスで唇を塞がれる。深く舌を絡め取られて、脳みそまで溶けそうだ。
「んん…っ!」
ある場所を抉られた瞬間、身体がビクンっと反応した。何かを確信したようにソコを擦り上げる弘輝の動きに慌てて腰を引くと、抱き締められて動きを封じられた。
「ん…ッ、ふ…ぅッ、んんん──…ッッ!!」
それはほんの数秒も保たなかった。弘輝の腕の中で身体が簡単に跳ねて、あっさり絶頂を迎えた。キスで塞がれたままの唇に軽く酸欠になって、苦しくなったあたしは弘輝の腕を叩いた。
「すみません、苦しかったですね。こんな簡単にイってくれるとは思ってなくて…」
息を整えるあたしの頬にキスをしながら、弘輝がそう謝る。いとも簡単に達してしまったことが急に恥ずかしくなって、あたしはふぃっと顔を横に向けた。そんなあたしの様子を見て弘輝は小さく笑うと、そっとあたしの顔を正面に戻した。
「今夜はたくさんイってもらうんですから、これぐらいで恥ずかしがっていては困ります」
「へ…っ!?」
弘輝の言葉に思わず変な声が出る。たくさんイってもらうって、急に何…
「覚悟してください。帰りたくないとわがままを言ったのは、蜜柑の方ですからね」
熱を持った瞳でそう言ってあたしを見つめた弘輝に、あたしはキュウッと下半身を締め付けた。
◇
「ひぁあ…ッ! らめ…っ、弘輝…ッ、も…、無理…ッ、イけな…ッ、ふぁああーーー…ッ!!」
「ふふ、潮まで吹いて、可愛い。大好きですよ、蜜柑」
そう言いながら、弘輝が潮を掻き出すようにソコを責め続ける。散々昇りつめさせられた身体はもはや力が入らず、弘輝の腕の中でただ為すがままに感じるしかなかった。
「あっあぁあ─…ッ、と、止まって…ッ、ふぁあ…ッ、イっ、イクの、終わんな…ッ、あぁああ──…ッ!!」
「まったく、帰りたくないだなんて。僕がせっかく理性を保っていたのに、それを外したのは蜜柑ですからね」
そう呟いた弘輝の言葉を、あたしはもはや聞く余裕などなかった。
End
[ 1/1 ]
←Prev | 目次 | TOP | Next→