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土曜日から、及川くんのことを考えてばかりだ。考えないようにと思うのに、気付くと及川くんの顔が頭に浮かんでいた。

「おーい、緑野…っ」

目の前10cmの至近距離で手を振られ、我に返る。

「あ、ごめん、鈴木くん。なに…?」

「字、ミミズ。何書いてんの」

そう言われて自分の手元を見てみれば、確かに文字とは呼べないミミズのようなものを書いていた。

慌てて消ゴムで消す。

今日はあたしが日直で、鈴木くんは日誌を書くあたしに付き合って残ってくれている。人を付き合わせておいて、ミミズを書いている場合ではない。

「なんかさ、今週に入ってから変だろ」

「そ、そんなこと…ないけど」

「さっきのリーディングで当たった時も変だった」

「え…?」

「和訳、速すぎ。いつももっとゆっくり訳してやってるくせに、今日のあれは完全に緑野ペースだろ」

「そ、そうだった…?」

「うん。みんな目が点で、俺は面白かった」

そう言いながら、鈴木くんは笑った。
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