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期末テストが終わって早2週間、季節はあっという間に冬を迎えて、クリスマス間近な街中はイルミネーションで彩られていた。

現在、あたしは予備校からの帰り道を鈴木くんと歩いていたりする。

「もうすぐ冬休みだな」

「うん、そうだね…」

「って言っても、俺らは冬期講習みっちりだけど」

そうなのだ。大晦日と三が日以外は、あたしも鈴木くんも予備校の冬期講習が毎日入っていた。

「あのさ、終業式の日、午後用事ある?」

終業式の日…
それはつまり、クリスマス。

用事はないけれど、この日に一緒にいるっていうのには、多分、一般的に特別な意味がある。

「及川となんか約束でもしてた?」

「う、ううん。及川くんとは、最近全然話してないから…」

「じゃあ、空いてる?」

「う…、まぁ…」

「緑野に付き合ってほしい場所があるんだ。駄目かな」

「う、ううん。大丈夫…」

「やった」

そう言って、鈴木くんは嬉しそうに笑った。

あたしは、はっきりしない自分に自己嫌悪。及川くんが怒る顔が浮かんだ。

あれから及川くんとは一度も話していない。クラスも違うし、廊下ですれ違ったりすることもほとんどなかった。

まるで何もなかったかのように、付き合う前の他人だった頃のように、毎日が過ぎていた。

そして、及川くんがいなくなった隙間を埋めるように、気付くと鈴木くんがそばにいた。
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