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「蜜柑ちゃん、違うよ、そこ。3じゃなくて6」
中間テストを明日に控えた休み時間。及川くんあたしの前の席を陣取り、勉強するあたしにちょっかいを出していた。
「蜜柑ちゃんって、数学苦手だよねぇ」
そうなのだ。正直、及川くんに勝てるかどうかは数学にかかっているといっても過言ではない。
「ほら、また違う。2段目で3乗書き忘れてる」
「う"…、ホントだ…」
さっきから、的確な指摘だけに文句は言えない。
「あ、ひょっとして、わざと負けようとしてくれてる?」
「な…っ!本気で勝とうとしてるってば!」
「ふぅーん。俺、最初でも手加減しないからね」
「は…?」
「濃いの、しようね」
そう言うと、及川くんはにっこり笑って自分のクラスに帰っていった。
鈴木くんは、あのあと何もなかったかのように、いつも通りに振る舞ってくれていた。
夢か嘘だったんじゃないかってくらい。
ホントに夢か嘘ならよかったのに…と思いつつ、しかし、あんなにダイレクトに男の子から好意を示されたのが初めてだったあたしは、そんなことを思っては罰当たりだ、とも思ったのだった。
2学期の中間テストは全9科目。
そのうち、選択科目を除く計7科目の上位10名の順位が学年掲示板に貼り出される。
3日間の試験期間はあっという間に終わり、明日が勝負が決まる日だった。
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