4/6
花火大会の日、約束通り5時に迎えに来た及川くんは、丁寧な挨拶といつもの笑顔でがっちりお母さんの心を掴み、そんなお母さんに急かされるようにして、あたしは家を出た。
「だから言ったじゃん、大丈夫だって」
「お母さんまで、たらしこむなんて…」
「蜜柑ちゃん本人が一番頑なだからね。周りから攻めていかないと」
悪びれる様子もなく、にこっと笑う。
ゲーム感覚で付き合い出したくせに、果たしてどこまで本気なんだか…
「てか、蜜柑ちゃん、似合うね。浴衣」
「そ、そうかな?」
「うん。その照れた顔もばっちり。いつもそれくらい素直ならいいのに」
「な…っ!?」
「怒らない、怒らない。せっかく可愛いんだから」
そう言うと、及川くんがあたしの手を握った。
「ちょっ、何勝手に繋いで…っ」
「はぐれたら困るでしょ」
「いや、はぐれたら、帰るでしょ」
「ひど…。俺、今日この手絶対離せないじゃん」
「え…、いや、子供じゃないんだから。繋いでなくてもはぐれないってば」
「子供じゃないんだから、隙を見てナンパされたりするかもしれないじゃん」
むしろその可能性が圧倒的に高いのは及川くんではないかと思う…
[ 4/6 ]
←Prev | 目次 | TOP | Next→