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花火大会の日、約束通り5時に迎えに来た及川くんは、丁寧な挨拶といつもの笑顔でがっちりお母さんの心を掴み、そんなお母さんに急かされるようにして、あたしは家を出た。

「だから言ったじゃん、大丈夫だって」

「お母さんまで、たらしこむなんて…」

「蜜柑ちゃん本人が一番頑なだからね。周りから攻めていかないと」

悪びれる様子もなく、にこっと笑う。
ゲーム感覚で付き合い出したくせに、果たしてどこまで本気なんだか…

「てか、蜜柑ちゃん、似合うね。浴衣」

「そ、そうかな?」

「うん。その照れた顔もばっちり。いつもそれくらい素直ならいいのに」

「な…っ!?」

「怒らない、怒らない。せっかく可愛いんだから」

そう言うと、及川くんがあたしの手を握った。

「ちょっ、何勝手に繋いで…っ」

「はぐれたら困るでしょ」

「いや、はぐれたら、帰るでしょ」

「ひど…。俺、今日この手絶対離せないじゃん」

「え…、いや、子供じゃないんだから。繋いでなくてもはぐれないってば」

「子供じゃないんだから、隙を見てナンパされたりするかもしれないじゃん」

むしろその可能性が圧倒的に高いのは及川くんではないかと思う…
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