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新学期が始まって一週間。
さすが新設した特進クラスだけあり、授業の内容も深く、先生達の期待も強く感じる。

これから受験までの間に、最後の一年をしっかり頑張らなくては、と身が引き締まる思い…

なのだが。
目の前のこの人は相変わらず通常運転…

「ねぇ、及川くん。もう同じクラスなんだから、毎回休み時間に目の前に来なくてもいいんじゃないかな?」

「何言ってんの。放っといて蜜柑ちゃんが口説かれたら困るでしょうが」

「口説かれないから!」

「いや!さっきの英語で蜜柑ちゃんが指されて超絶綺麗な発音で読んだ時、トキめいた男子絶対いるから!少なくとも俺は惚れ直したから!」

及川くんって…
頭はいいのに、バカなんだろうか…

「ところで蜜柑ちゃん。来週のコレ、勝負しない?」

そう言いながら、及川くんが机の上のプリントを指差す。そこには、ホームルームで配られた年間予定表の“実力確認テスト“という文字があった。

「いいけど…。でも私、勝っても及川くんにしてほしい事って別にないかも」

「じゃあ、蜜柑ちゃんは勝ったらお姫様抱っこね」

「…勝手に決めないでよ」

と言いつつ、正式に彼女になった今、及川くんにお姫様抱っこしてもらうのは、結構嬉しいかもしれない。

「てか及川くんこそ、今更勝負までして、したいことなんてある?」

そう聞くと、及川くんがキョトンとした顔で私を見る。何か変なことを言っただろうか…

「その、もう彼女なんだし、私にできることなら、言ってくれればいつでも…」

自分から、"彼女"というのは、まだ少し恥ずかしい。

「どうしよう…」

「え?」

「俺の蜜柑ちゃんが可愛すぎる…」

そう言うと、教室なのも忘れてその場でギューっと抱きしめられた。私は慌てて及川くんを離した。


「俺は、蜜柑ちゃんに勝ってお願いしたいことなんてまだまだ死ぬ程あるよ」

「し、死ぬ程あるの?」

振り返れば、及川くんが持ち掛けてきた勝負は無茶な条件ばかりだったから、それがまだ死ぬ程あるというのは、いささか不安だ。

「でも及川くん、定期試験はもう卒業まで5回ぐらいしかないけど…」

「でも卒業しても一緒にいるでしょ」

「それは、もちろん!」

そう言うと、及川くんの表情が優しいものに変わった。好きだなと胸がキュンとする。

「まぁ、とりあえず、今回は…」

そう言いながら及川くんが手招きする。

内緒話?
耳を近づける。

「俺が勝ったら、蜜柑ちゃんからキス。深くて長いやつ」

そう囁いて笑った。
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