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「んっ、はなし…て」
「抵抗しても無駄。わかってんだろ?」
「やっ、んぁっ…」
契約を結ばされたあと、あいつは何度かあたしの前に突然現れては無理矢理抱いていった。
毎回、あたしの前に現れたとたんに例の結界を張るもんだから、あたしは魔力を使うこともできず、見つかったら最後、ただされるがままになるしかなかった。
けど、いくら頭の悪いあたしだってぼーっとあいつに捕まってやってるわけじゃない。どうやったら会わずに済むのかとか、いろいろ考えて隠れてみたりもした。
でも、どこに隠れていても簡単に見つかって捕まってしまう。
最初はどうしてかわかんなかったけど、どうやら契約されたときに左手の薬指に巻き付けられた紐のせいで、あたしのいる場所は常に天使にわかってしまうようだった。
初めて抱かれたあと、何も知らなかったあたしは、いろんな本を読んだ。そして、あの行為が何だったのか知った。
あれは本来、天使同士あるいは悪魔同士で行うモノ。
生物学的には、あれをすることで子供が出来るんだけど、ホントは、愛し合った2人が愛を深めるために抱き合うんだって知った。
ただ、天使と悪魔で抱き合う場合は例外。
あいつの言った通り、天使は魔力を使うための精気を、悪魔を抱くことによって手に入れることがあるらしい。
魔力が使えなかったら、天使も悪魔もただの人間と一緒。この天界で生きるためには、例えどんな高度な呪文を学んでたって、魔力なしではとんだ役立たず。
あの天使は、魔力を補給するためだけに、あたしの自由を奪ってこんな目に合わせてる…そう思ったら何とも言えない悔しさと悲しみがあたしを襲った。
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