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「緑野先生、これ職員室の前で生徒が渡せって」

「ひゃあ…っ!」

「ただのノートっすけど」

「あ、ありがとう、ございます…」

「どうも」

後ろ髪の寝癖を揺らしながら、飄々と有馬先生が自分の席に戻っていく。

急に声を掛けられた動揺で心臓が煩く耳が熱い。

「まったく、相変わらずね、有馬先生は。せめて、寝癖ぐらい何とかならないのかしら」

隣でそう言う声が聞こえて、すぐに我に返った。原田先生が呆れ顔を有馬先生に向けていた。

原田先生は五歳年上の英語の先生で、美人で頭の回転も早く、だけど気取っていない所が話しやすく、先輩としてとても頼りになる先生だ。

「てか、緑野センセ?異様に真っ赤だけど、あんなヤツ好きになったら絶対ダメだからね」

「な、何言ってるんですか!違います…!」

「ならいいけど。緑野先生みたいな子に有馬先生は危な過ぎるから、近づいちゃ駄目よ!」

それはもう、この前の出来事で、嫌というほど思い知ったばかりだ。学校で身体を触るなんて、教師としての人格を疑う。

不信感しかない…はずなのだが。

あの人の愛撫で、生まれて初めてイったのも事実だった。
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