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「え…、何お前、次の会議10階だけど階段で行くの?」

「あ、村瀬。お疲れ。うん」

「やめとけよ。もう会議まで2分しかないんだから、ほら」

到着したエレベータに乗り込み、『開』のボタンを押しながら、緑野が乗るのを待つ。

「早く。俺まで遅刻する」

「う、うん…っ」

そう急かし、緑野が乗ったのを確認して扉を閉めた。

15時から新製品のマーケティング会議。同期の緑野は企画部のエースで、今日も中国市場の今後の戦略の提案を任されている。

新人の頃から可愛いと話題だったが、口説く隙が全くなく、同期が何人も告白しては玉砕し、諦めていた。

俺も惚れかけた一人だが、その気がない奴を口説くほどの熱意もなく、それが幸いしたのか、今では同期としてそれなりに信頼されている(と思う)。

「すごい夕立だな…」

「そうだね…」

エレベータのガラス張りの窓の向こうは昼間にもかかわらず分厚い雨雲で真っ暗で、激しい雨が降っている。

会議中、停電でもしないといいけど…

なんて思ったその瞬間だった。

「きゃあ…っっ!」

緑野の叫び声と同時に稲妻が光り、動き出そうとしたエレベータが突然止まって電気が消えた。

と同時に、緑野が俺の胸に飛び込んできて、そのまま壁に押し付けられた。

「え…、なにお前、雷怖いの?」

「ご、ごめ…っ」

「いや、いいけど…」

体を離そうとした緑野を見て、そのまま抱き寄せた。俺のシャツを掴んだ指先が小さく震えていた。

「顔、真っ白じゃん。動くまでいいよ、そこにいて」

「う、うん…」

雷が落ちるたび、緑野の肩がビクっと震える。この状況でこのエレベータはこれ以上ない恐怖だろう。

だから階段で行こうとしていたのか…

幸いにも停電はほんの数十秒で復帰し、エレベータを降りると緑野は安堵したように深呼吸をした。

青白い顔色に心配したが、その後の会議では何事もなかったように平静を取り戻した緑野が、いつも通り隙のないプレゼンをこなしていた。
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