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目の前の文字に目を疑った。

「媚薬を飲みきるまで出られない部屋」

壁に貼られた一枚の紙。その下の小さな台に、小瓶が数にして10本ほど並んでいる

隣を見ると、緑野先輩が同じように立ちすくんでいた。

「あの…、僕ら、会社の前で信号待ってましたよね…」

「う、うん…、急に何この部屋…」

淡白な部屋を見渡す。四面とも白い壁があるだけで、出口らしきものが見当たらない。

媚薬と思われる小瓶が置かれた台の横にはダブルベッドがあり、枕元の棚には何やら卑猥な玩具が並んでいる。

「ね、これって何て読むの?媚びる…薬…?」

無知な顔で緑野先輩が俺を見る。
マジか。そこからか…

「読み方は"媚薬(びやく)"っすね。男性向けの漫画とかでよくあるシチュエーションです」

「そうなの…!?」

「まぁ…。それ飲むと勝手に身体が欲情するんで、そのままSEXすると出れるやつですね」

「え…っ!欲…、う、嘘…」

そう言いながら、緑野先輩は当惑した赤い顔を見せた。

「あ、あたし達、そういうことする関係じゃ…」

「それは僕もわかってますけど」

「し、しないで出られる方法はないの…?」

その気がなくても媚薬が強力で、普通のソレよりも乱れた過激な行為に及んでしまうのが定番のストーリーだ。

そして困ったことに、俺はこの人に片思いをしていたりする。

つまり、こんな物を飲まなくても彼女を抱きたいし、飲んだらそれこそ止められる自信はない。
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