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「福太くん、ごめんなさい…。私、他に好きな人が…」

あぁ、またか…

「それって、前に相談に乗ってた経理の先輩?」
「うん…。昨日…、告白されて…」
「良かったじゃん。おめでとう」

俺の名前は、小松川福太。通称、幸福を呼ぶ男。

昔から、俺と付き合った女の子は、何故か毎回、俺よりもイイ男を見つけて去っていく。

この子もそう。無理めな男への片思いをしていて、相談に乗ったのをきっかけに付き合うようになって1ヶ月。

その無理めな男の方から、彼女に告白してきたようだった。



「幸福を呼ぶ男って…、女の子にとってはそうでも、俺は貧乏くじしか引いてないっつーの」

地下の資料室。誰もいない空間で、思わず本音が漏れた。

でもなぁ…
好きだった奴と、両思いになれた女の子を見ると、おめでとうって思うんだよなぁ…

フラれてる癖に、どこまで人がいいんだか、俺は。

その時だった。資料室のドアが開く音がして、人が入ってきた。

「待…っ、木原部長…っ」

女子社員の声と、木原部長…?
隣の部署の部長だ。

なんだか様子が…

そう思い、棚の影からそっと入り口側を見ると、木原部長が女性社員を壁際に追いやり、喰わんとしているところだった。

ああ…、最悪…

俺は見つからないよう、とりあえず、その場に座り込む。

「や…っ、駄目ですってば…」

「大丈夫だよ、ここなら」

大丈夫じゃないっつーの…

しかもあんな入り口でやりやがって…
俺が逃げられないじゃないか。

つーか、木原部長って既婚者だったはず…
女子社員と不倫ってことか…?

他人の情事など、見たくはないが、ここで顔を合わすのも避けたい。隣の部署とはいえ、上司に目をつけられたくはない。

そんなことを思っている間に、女子社員の声色が潤みを含んでくる。

「や…っ、あ…」

一体誰だと思いつつ、棚の隙間からそっと覗く。俯いた髪に隠れ、顔がよく見えない。木原部長の骨張った指が、彼女の胸を揉んでいる。

細いわりに、意外と巨乳…。イイ身体だ。
あれなら不倫などしなくても、いくらでも相手はいるだろうに…

その時だった。

部屋に携帯の着信音が響く。

一瞬慌てたものの、俺ではない。木原部長の携帯だった。

「ああ…、うん…、そうか。わかった、すぐに行く…」

呼び出しだろうか。このまま行為に及ばれたらどうしようかと思っていたが、俺は静かに安堵のため息を漏らした。

「ごめん、呼び出しだ」

「いえ…、大丈夫です」

「続きは明日の夜に」

そう言うと、木原部長は彼女に軽くキスをして、資料室から出ていった。

残された彼女は、静かに服装を整える。その横顔に、俺は思わず息を飲んだ。

隣の部署の、緑野先輩だ。

緑野先輩と言えば、男子社員の憧れの存在だ。
人当たりが良く優しくて、その一方、抜群に仕事が出来る。

部署が違う為、俺はほとんど接触したことはないが、やや童顔のあの顔で初めて笑いかけられた日、こんな可愛らしい人がいるのかと、心を奪われた。

その緑野先輩が不倫だなんて…

俺は思わず、彼女に声をかけていた。
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