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名前変換我が宝生院家は曾祖父の代に立ち上げた事業が成功し、それ以来、宝生院グループと言えば誰もが一度は聞いたことのある有名企業だった。
そう。
いわゆるお金持ち。
「先生、これは?」
「これは余弦定理を使って解いてみましょうか」
「こう?」
「そうですね」
幼い頃からの英才教育。
小中高と私立のお嬢様学校に通い、帰宅後は家庭教師の授業にピアノのレッスン。高校に入ってからは、礼儀作法とお料理のレッスンも加わった。
ちなみに今は、家庭教師の先生と数学の授業中。去年から理系科目の家庭教師に就いたこの先生は、とてもカッコイイ。
嫌いな数学の成績も先生に変わってからウナギ登り。
我ながら単純だとは思いつつ、しかし、おそらく自分のやる気の問題だけではない。彼の教え方がとびきり上手いのだ。
「そういえば蜜柑さま、先日16歳をむかえられたとか」
「そうなの!」
「おめでとうございます」
「ありがとう」
優しい笑顔。
先生って笑うと少し童顔で可愛いんだ。
「何を差し上げたらいいか迷いましたが、教師として、問題集を一冊追加することにいたしました」
「え゙…」
「こちらです」
そう言って、分厚い本を持ってにっこり。
高校数学
最重要問題集…
眉をへの字にさせてフリーズしたあたしに先生は軽く噴き出して、
「冗談です」
と笑った。
「洋菓子にしました。来るときに葉山さんに預けてありますから、皆さんで召し上がってください」
゙葉山さん゙とは我が家のお手伝いさんのことだ。
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