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「さてと、では始めましょうか」

金曜日の19時きっかり。聞き慣れた先生の言葉。

「あ、この授業はノートはいりません」

「そうなの?」

「はい。教科書も問題集もなし」

そう言って、先生はにっこり笑った。そういえば、先生に会える日が増えることに浮かれて、何の授業なのか聞いてなかったな。

「そうですね、最初ですから、今日は感覚を研ぎ澄ます訓練から入ります。これを」

そう言って差し出されたのはアイマスク。

アイマスク…?

…大丈夫!
先生だもん。
授業なんだし。

「そのまま立ち上がれますか?」

「え…、うん」

ぎこちなく椅子から立ち上がる。視界は真っ暗だ。

「こちらを向いて」

「こう…?」

「そうです。視界を遮られて不安ですか?」

「だ、大丈夫」

「では、両手を前に」

言われるままにを手を差し出すと、先生の手に優しく包まれた。

「今日はこの手も少し邪魔です。軽く拘束させていただきますね」

「え…」

そう言って腕の先に触れたのは布のような感触。

ふわっと手首を包み、キツすぎず、しかし自力では解けない程度に結ばれてしまった。
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