ふと、目を開けたらそこは別世界だった。

辺りを歩く人は外人ばっかりだったし、何より私がいた所の風景は一欠けらも残っていない。

太陽は丁度頂点に達しているから、12時頃だろうか。

ショーウィンドウの前に立ち尽くす私。

後ろを向いてショーウィンドウを見ると、映ったのは子供。

それも、14歳くらいの。

その姿は自分の昔の姿に酷似している。

思わず、顔を触ると鏡に映る子供も顔を触る。

つまり、それは私だという事で。



「―――…ッ、」



声が漏れた。

零れた言葉と共に涙が頬を伝って流れ落ちていく。

やはり子供というのは涙脆いものなのだろうか。



「――…ッ、?」



涙を拭いて立ち上がり、これからどうしよう、と声を出そうとした時だ。

何かおかしいと気付いた。

違和感があった。

主に喉に。

幾ら声を出しても、それが声が音となることはない。

止まっていた涙が再び頬を伝う。

喉に手を当てて、声を無理矢理吐き出すようにしてみるけれど、声は出ない。

口から吐き出されるのは掠れた、息のみの声。

フラフラとウィンドウに寄り掛かりながら辺りを見てみる。

さっきからやっている私の行動を見た外国人がちらりとこちらに目を向けてくることはあったけれど、面倒事は避けたいのか、はたまた迷ってるのかは分からないが、手を差し伸べてくるようなことは一切なかった。

私は何故ここに居るのだろう?

私は確かに“あの場所”で死んだと思われる。

だからこそ、此処に来れるわけがない。

頭の中で繰り返される想像と考え。

しかし、それをずっと考えているわけにはいかない。

少なくとも私は外国に来て、止まる場所どころか行先も、何もないのだから。

どうやら、“あの場所”に居た時に持っていたショルダーバッグは小さく、可愛らしいものと変わってはいるがある。

その中に何故かは分からないが、日本の者でない現金が入った財布と元から入っていた金額より明らかに多い通帳と携帯、それから15歳の私でも付けられないような大きさのものだったが、雪の結晶と小さな光の様なものが繊細に彫られた指輪があった。

指輪は私が元々持っていたものではない。

思わず気味が悪くなって捨ててしまおうかとも考えたが、直感でそれを捨ててはいけないと、そう思った。

仕方なく首に付けていたネックレスを一度外して、チェーンに指輪を通してもう一度、首へとつけた。


取り敢えずは此処から違う所に行かないと。

宿はこの年じゃ取れないだろうし、仕方がない。

今日は食事などを買って野宿か。

幸い、服も冬用のもので、暖かいものだから外で一晩くらいなら大丈夫だろう。


安易にそう考え、とりあえず移動するためと、近くにあった細道へ入って行った。






哀しいお知らせ

(訪れた哀しいお知らせ。)
(あぁ、どこまで私は堕ちたらよいのでしょう)





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