夢の続きをくれたのは、あなただけだったよ
仕事が終わって、ゆっくりと腕を上げて背伸びする。ああ、つかれた。今回はいろいろ大変だった。まさか私にこんな大きなプロジェクトが任されるなんて思いもしなかった。先輩にもすごく心配されてた私なのに。コツコツと仕事はやってきたけど、ドジなところは相変わらずだし。うーん、でも任されるのって大変だけどうれしいな。私、ちょっとは成長したのかな。
「どうしてそんなにとろいのかしら!よくそんなのでプロジェクトの責任者なんかになれたわね」
「す、すみません」
「もういいわ!さっさと終わらせてくれるかしら」
少し自信が付いたと思ったらすぐこれだ。頼まれた仕事を期限がまだあると先延ばしにしてたら先輩に遅いと怒られた。期限は過ぎてないけど期限前にやるのが当たり前だろうというお叱りだった。ごもっともで何も言えなかった。
とりあえず席に戻ってその仕事を終わらせる。ううん、これじゃ残業確定だな。せっかく今日は洋一君が家に来てくれる予定だったのにな。仕方なく携帯を取り出して一言先に謝って残業になったと伝える。この時期会えるのがすごく貴重だけど、仕事は大事だもんね。洋一君、ごめんなさい。
お昼休みになって同期の仲のいい子とご飯に行く。話を聞いたらしくそれ完全に嫉妬でしょ!と先輩に対して怒ってくれた。たしかに先輩をおしのける形での抜擢だったからね。それでも先輩の言ってることに間違いがあるわけじゃないし、仕事が遅いのは事実なのだから。ありがとうとお礼を言ってお昼ご飯を食べた。
ドジな私が、社会人になれるかすごく不安だった。学生のころそれですごく悩んだ。お父さんがこいつならと、お見合い写真を持ってきたこともあるほどに。それでも自分も頑張ろうと思ったのは洋一君をテレビで見たときだった。頑張ってる洋一君を見て、私もやらなきゃって思えたのだ。そうして今の仕事についているのだから、ほんとうに頑張りたい。だってここは、初めて自分でつかみ取ったものだから。一人の大人として。
だんだんと外が暗くなり、上がっていく人がちらほらと見えるが私はどうも終わりそうになかった。仕方がないとあきらめてひたすらパソコン画面に向かう。これ終わらせて、次は洋一君と会えるように気を付けよう。仕事の期限も見るけどプロジェクトの大きさによっては急がないといけないものだってあるし、そういうのも考えながら次から仕事しよう。
やっと終わったころにはみんないなくて、急いで片付けて電気を消す。携帯で今終わったということだけ洋一君に連絡してエレベーターで一階まで下りた。外はまだ蒸し暑い。夜だからといって涼しくなるわけじゃないのはわかってるけど、暑いのって苦手だな。
「おう、おつかれ」
「よ、いち・・・・くん」
「ヒャハハ!よいちくんって誰だよ。つか間抜けな顔してんな」
「なんでここに」
「遅くなるっていうから、迎えに来た。さっきまでそこのカフェに入って待ってたんだよ」
もう一度お疲れさん。と言われてたまらず抱き着いた。ぎゅうぎゅうって抱き着いて。熱いのが気にならないくらい、幸福感が胸を満たす。ああ、もうほんとに好きだな、この人のこと。
「よく頑張ったな。えらいえらい」
「こ、子ども扱いしないで」
「してねぇよ。子供の女に、エロイことなんかできねぇだろ」
「こここここんなところでなに」
「ヒャハハ。帰んぞ。後ろ乗れ」
ヘルメットを渡されて頭からかぶり、洋一君のまたがっているバイクの後ろに乗ろうとする。けど結構高くてなかなか乗れない。困っていると洋一君はちょっとまてといって一度自分も降りてバイクを止めた。急に体を持ち上げられて簡単に椅子に座らされてしまう。ずるい、こういうところがかっこよすぎるんだ。こんなことできるのって少女漫画くらいだと思ってた。こんなタイミングで迎えに来てくれるのも、ほんとに、かっこよすぎて泣いちゃいそうだ。

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