もうこの唇に触れるものはない
「洋一君のファーストキスはだれ?」
「は?」
「先生はね、御幸さんじゃなくて幼馴染の男の子だったんだって。ケンカしたときにもみくちゃになって」
「あいつはどこの芸人だよ、ケンカからのキスって」
ケンカからキスするなんてほんとにあんのかよ。どうやったらなんだよ。顔近づけすぎたとか??頭突きかまそうとして、とかか???わかんねぇ。あいつも対外やばいよな。やってることっていうか、天然っぽい過去が。
御幸さんは記憶になくて、あるうちの初めては社会人になってから何だって。今どきないくらい真面目だね。男の人なのに。そういってゆゆはすごく感心してるがあいつの場合ただ学生時代は野球一本に絞ってて、そのあとキスと一緒に一線超えてると思うぞ。決して純情真面目な奴ではない。断じてない
そういや高校のころ、亮さんにふざけて罰ゲームで御幸とポッキーゲームをさせられたことを思い出す。途中で先に話したほうが罰ゲーム追加と言われてお互いにひかなくて唇が引っ付くまでやった。おかげで追加の罰ゲームはなかったが、いろいろ大事なものがなくなった気がする。・・・ってことは御幸の初めて奪ったのは俺かもしれないという疑惑がでてくるわけだ。いやいや、あれはカウントしないだろ。うん。忘れろ自分。
「そういうゆゆはどうなんだ?おっちゃんとかゆゆのこと溺愛してたから奪われてんじゃねぇの?」
「あはは。うん、お父さんが最初にやろうとしてお母さんがかわいそうでしょ!って殴って止めたんだって」
「おばちゃんすげぇな。おっちゃんいつも尻にひかれてるもんな」
「でもおかげで私の初めてはちゃんとお父さんから守られました」
「扱いがひでぇ」
「洋一君こそ、おじいちゃんに奪われたりしなかったの?」
「子供ながらに拒絶したんだとよ。号泣して」
「おじいちゃんかわいそう・・・・」
「なんでだよ!」
じゃ、初めてはお互いだね。は?あれ?洋一君覚えてない?子供のころ、洋一君がずっと一緒にいてくれるって約束したときにキスしてくれたの。あれがわたしのファーストキス。懐かしいね。なんて無邪気な笑みを浮かべている。確かに覚えてる。ガキの頃そんなことをしたもんだからマセガキと母親笑って何度か話されたこともあるから忘れることもなかった。今思い出すとこっぱずかしい。
「その次も洋一君だった」
「・・・中学の時の事故だろ」
「うん。階段から落ちたときに助けてくれて、事故ちゅー」
恥ずかしかったなぁ。なんてまるで惚気るように言われて自分事なのに俺のほうが恥ずかしく感じる。初めてのキスも、セカンドキスも、最後のキスもぜーんぶ、洋一君だね。と嬉しそうに言われると、もうこっちも何も言えなくなって、むしろほかの人とキスしたことあるとかほんとごめんって謝りたくなるレベルで、嗚呼こいつが好きだって思ったし、一生離せない自信しかない。

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