この身は君しか愛せない
ってことがあったんだよね。と電話で言われ顔に熱が集まっていくのがわかる。電話したのは自分からだったが、今更ながらするんじゃなかったと後悔した。きっと電話の相手は御幸に最近似てきたから同じようににやにやと厭味ったらしい笑みを浮かべていることだろう。ゆゆと最近会ってるか。と聞くだけだった。会ってるなら少し様子を聞ければな、ぐらいの気持ちだったのだ。なのに出てくる話は俺がいないから好き放題の愚痴とかではなくて、まるで神様をたたえるかのような会話だ。つらい、なんだこの辱めは。
「そろそろこっちに帰ってくるんでしょ?だったらゆゆちゃんの予定後でメールしとくね」
「なんでお前がゆゆの予定知ってんだよ」
「ふふ、このぐらいの浮気ゆゆちゃんのいう大きくて深くて広い器で受け止めてよね」
またね。お疲れ様。といって通話は切れ、大きなため息を漏らす。なんか俺、美化されてる気がすんだけどこれは気のせいか?何してもなんでそんなプラスで受け止めてんだ??ゆゆがはなしたっていう子供のころの話を聞けば実際の話となぜか少し違う。弱い者いじめが嫌いだったっていうのは事実だが、ケンカが嫌いだったわけじゃない。守るために使うっていうのは確かだが、どちらかというとケンカしたときはたいてい相手をぼこぼこにしてた。つまるところ普通の女が見たら俺は凶暴な男なんだ。なのになんであいつの脳内ではかっこいいに変換されているのだろうか、はなはだ不思議である。
昔っからそうだ。ゆゆは少し、いやかなり人とは違った。危ない道を平気で行こうとするし、ケンカしてる人を見て仲良しだね。っていったりしてるし、俺は子供ながらにこいつやべぇな。いつかやばいことになるだろなって思ってた。だからひと時も目を離さなかった。小学生のころ、学年は一緒でもクラスは離れたことがある。そういうときの遠足の時とかは先生を無視して俺はあいつの傍にいた。危ないからって手をつなぐのもずっと俺。それが中学までずっと。だからもちろん思春期特有の時期には色恋沙汰に目覚めたやつらがからかってくることもあったが純粋培養され続けたゆゆには理解ができず、沈黙が訪れるのでだんだんとそういうのはなくなった。あとは普通に仲良しだからね。とか大好きだもん。っと平気で笑って返すゆゆにちゃかしても面白みがなかったんだろうな。
家に戻るよりも前にゆゆの家に行く。合いかぎをもらってるから勝手にはいれるのは入れるけど、なんとなく出迎えられるのがうれしくて、インターホンを先に押すのが当たり前になっていた。だがどうやら今日は出てきそうにない。二回ほど押したが反応はなかった。
鍵をつかって中に入り、ちゃんと鍵を閉めてから靴を脱いで部屋の中に入った。ゆゆ?と呼んでも返事はないのに明かりはついてる。もう少し奥に進むと規則正しいおとをさせながら眠っているゆゆが目に入った。まだ8時なのに、化粧も落とせてない。このまま寝かせてといてやりたいがそれで大変なのはゆゆだ。心を鬼にして起きろ。風呂入れ。と揺さぶってもなかなか起きない。そうだ。こいつ寝たらなかなか起きないんだよな。
「ゆゆ。明日大変なことになるぞ」
「ん〜・・・・洋一君」
「・・・・そんなかわいい寝言いうなよ、くそ」
あー、やばい。かわいすぎる。仕方ない。今はとりあえず寝かせて、朝の目覚ましはやめにならしてやろう。化粧はコットンの拭き落とすのがあったはずだ。それで簡単に落としてやろ。そうだな、あとは、起きたらびっくりするように抱きしめたまま眠ろう。明日の朝が楽しみだ。


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