初恋は実らないというが、まさにそれだった。俺の初恋は俺の唯一一緒にいた悪友に持っていかれた。性格の悪いあの悪友が心底惚れ込んだ女だ。性格は、そうだな。沢村に近いかもしれない。騒がしいし、うるさい。けどどこまでもまっすぐで明るい奴だった。いつの間にか惹かれていて、それはあの悪友も同じで、最後まで親友でいた俺は悪友に負けたのだ。悔しくないといえばうそになるがそれでもあいつが幸せになれれば何でもいい。そう思えていた。同時に同じく失恋したやつがいた。それがもう一人の悪友だった歩惟だった。御幸に歩惟が惚れ込んでいたのを俺は知っていた。知っていて、あいつらの背中を押すようなことをした。なにより俺は好きな女に笑ってほしかったからだ。それで悪友が泣こうとも。
二人がうまくいった日、歩惟は笑っておめでとうと言って一日中笑っていた。なんだ。大丈夫なのか。と安堵した夜コンビニの帰り道の公園で一人泣いている女がいた。そう、あいつは泣いていたのだ。誰にも見られない、そんな場所で。俺がそこを通らなければあいつの弱さなんて誰も気づかなかっただろうってくらいあいつは完璧に演技していたのだ。ほんとは、そんなに苦しいくせに。
よぉ。と声をかけると消えろ。と暴言を吐かれる。そういわれることをした。こいつにとっては俺はひどく迷惑な野郎だっただろう。自分の恋路を邪魔したんだ。ほんとは隣に座るのなんておこがましいとは思った。けどこのまま一人にしとくのもなんかなと思ったから嫌がられながらも隣に座るとそれ以上暴言を吐かれることもなくただ時間が過ぎていく。門限、あるくせに何やってんの。やっと口を開いたらそれだった。時間的にはまだ大丈夫だからいいんだよ。というと時間の無駄遣い。と言われてちょっとむかついた。お前のためとは言わねぇけど、けどむかつく。もう帰ってやろうかと思って隣を見ると歩惟はこちらを見てかわいくないやつでしょ。と自傷気味にいう。しってるんだ。自分がかわいくないことなんて。ネガティブだし、馬鹿だし、特技も夢もなんもないし。いいとこない卑屈な嫉妬深いしょうもない女なんですよ。恋路の邪魔されるし、失恋するし、もうほんと・・・・最悪。最悪な誕生日だ。ぼろぼろとそういってまた泣き出す歩惟に何も言えなくなる。たん、じょうび・・・?だったのか?自分の生まれた、唯一自分が特別だと思える日に失恋した。それはどんな気持ちだろう。俺には経験のないものだ。

「倉持はさ、いいやつだね」
「は?」
「好きな子の幸せ考えるでしょ?私には、そんなのできなかった」

好きで。どうしようもなく好きで。顔がいいとかそんなんじゃなくてその人の一言でマンガのように一喜一憂する。好きになって幸せだった。好きになってほしいと思った。もっと話したいし、触れたいし、思いを通わせたいと願った。でもかなわなかった。私の恋には、無理がありすぎた。誰が好き好んでかわいくない、女を選ぶのか。性格もよくて、勉強もある程度できて、明るくて優しくて、そんな子とどうやって張り合おうっていうんだろうね。無理がありすぎた。わかってたから、泣くのだっておこがましいと思ったのに。
わたしもいいやつになりたかったな。なんていう歩惟に俺は結局何も言ってやれなかった。いつの間にか泣き止んだあいつはじゃぁね。といって勝手に帰っていく。それから歩惟は違う男と付き合い始めた。
昼飯をいつも一緒に食っていたのに突然昼休みに歩惟に隣のクラスの男が呼びに来て飯を食おうと誘ったのだ。あいつはそれを了承し、弁当を持っていこうとする。慌てて呼び止めて誰だと聞いたら彼氏だと即答された。意味わかんねぇ。お前好きだったんじゃねぇのかよ、御幸のことが。俺がそういうと歩惟は倉持の真似してるだけだよ。は?好きな人に幸せになってもらおう作戦。まぁ、私にできるのは自分の気持ちを、悟らせないことだけだから。じゃぁね。そういってあいつはその男と去っていく。廊下に一人取り残された俺はそれ以上何も言えなかった。
ころころと変わる恋人。さすがにそれには御幸も呆れていた。いい加減、一人に絞れよ。そう御幸がいうとあいつは笑みを浮かべていつもこの人ならって思うんだけどね。といってごまかす。違う。ちげぇんだよ御幸。こいつはほんとはお前のことが・・・・。それを俺が言えないようにしたんだ。振られることもできずに、こんな一途な奴がどうやって思いを消していけばいいんだよ。なぁ、御幸。お前が好きだっていってたんだよ歩惟は。けど俺がその邪魔をしちまって、不器用にお前の幸せを願おうとしてるんだ。だからさ、頼むから。これ以上傷つけるようなこと言わないでくれ。あいつの恋人みんなみんなあいつのことちゃんとわかってないんだよ。笑って、馬鹿っぽく明るいあいつしか見えてないんだよ。続くわけねーよ。誰も気づいてない、あいつのほんとの気持ちに。

「なぁ、歩惟」
「なに?また別れたけど何か」
「なら話早くて助かる。俺と付き合え。俺の恋人になれ」
「は?」

何言ってるの?お互いかなわない思い持ってんなら一緒にまとめちまえばいいだろって思ったんだよ。少なくとも俺は元カレたちなんかよりもお前のことわかってるし、ころころ恋人変える必要だってなくなるだろ。俺はわかれないし、不満も言わない。今のままの関係に恋人という名前が付くだけだ。驚いている歩惟の腕を引いて俺はそのまま腕の中に閉じ込める。もう、自分で自分に傷つくるのはやめろ。俺のその言葉を聞いてやっと歩惟はまた泣いた。


枯れた花に涙

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