あの子のお腹にはまだ小さな命が宿っていた。それなのに旦那は事故で死んでしまった。旦那の名前は御幸一也。プロの野球選手だった。籍をいれて間もなくのことだった。まだ式もあげれてなくて、指輪も渡せてない。そう御幸は切なそうにぼやいていた。あいつとわたしは世で言う友人に当たる関係だったのでそういった愚痴はよく聞いた。プロ野球選手はとてもつらいとかどうとか。そんなあいつはなんとか籍をいれて、この冬にやっと結婚式をあげるんだと嬉しそうに話してた。それがこれだ。
結婚式?笑わせる。お葬式だよこれは。バカじゃないの。あんたほんとにバカじゃないの。涙もでないくらい唖然としてわたしはたくさんの人が泣いてるなか、一人ぼーっと立っていた。
御幸が死んだのを一番最初に知ったのはわたしだ。なぜなら第一発見者だからだ。たまたま同じ店にきて、同じ商品をみていた。気づいたときにはお互い笑ってバカみたいに背中をバシバシ叩きあった。それは照れ隠しというものだった。こんな風に同級生とジュエリーショップなんかであい、そして婚約指輪なんてみてたから。笑ってお互いに目的のものを買って別れた。別れたあと、ふと言いたいことを思い出してそう会えない有名人となった人だから後回しじゃなく、戻って伝えようと思って引き返した。そして見つけた背中に声をかけようと思ったとき、私のとなりを勢いよく車が走っていく。まって。え。うそ。その先は・・・!

「危ない御幸よけて!!!」
「え?」

御幸が気づいたと同時に、車と彼は衝突した。真っ白になる頭。それでも体は勝手に動いて彼のそばにより応急処置をしていた。車は走りささった。けどそんなの気にしてられない。御幸っ。御幸っ。御幸っ。救急車を呼んでずっと大きな声で呼び掛けた。

「はっは・・・・なんて、顔して・・・」
「御幸っ!もうほんと、ふざけんなばか!死んだかと思ったじゃんか!!」

もうしゃべるな!って言ったら御幸は力なくわらいごめんな。と謝った。やめて。まるでほんとに死んでしまうみたいだ。必死にてを握って、血がつくのも気にせず抱き締めた。出血してる頭を上にあげて、すこしでも血が出るのをふせごうと必死に足掻いた。

「今日、買ったやつ・・・あいつに・・・わたし、て、くれね・・・?」
「渡すっ!渡すから!絶対喜ぶよ!その顔見たいでしょ?だったら」
「み・・・てぇな」
「ほら、だったらしっかりしてよ。ねぇ、生きてよ。わたし聞いてほしいことあるんだよ!」

御幸が、好きだった。高2のときからずっと好きだった。初恋だった。忘れられない恋だった。でもわたし、やっとそれを過去にできるようになって新しい恋をしたんだよ・・・・?だから、前に進みたいから、返事がほしかった。ねぇ、答えて。答えてよっ!


「愛してるよ、柚希」


そういって、御幸はそっと目を閉じた。救急車がきて、遅すぎる治療が行われて、間もなく御幸は死んだ。駆けつけた知り合いが涙を流すなか、わたしは警察に事情聴取をされ、気がつけばあいつのお葬式が終わっていた。

愛の言葉は赤く染まる

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テーマ「人外ファンタジー」
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